月別アーカイブ: 2019年6月

「生存権揺るがす格差」

本日の東京新聞朝刊一面に,年金問題に絡めて,1947年片山哲内閣,芦田均内閣で文部大臣を務めた森戸辰男氏に関する記事が掲載されていた。
森戸辰男氏は戦後,憲法学者の鈴木安蔵や杉森孝次郎らと,「憲法研究会」を組織し,「憲法草案要綱」を発表している。GHQの憲法草案に森戸氏らの「憲法草案要綱」の多くが採用されたのはよく知られたところである。記事にもある通り,憲法25条の生存権は1946年に日本社会党から立候補し衆院議員となった森戸氏が強く主張したものである。

東京経済大学名誉教授で,「五日市憲法草案」を発見した色川大吉氏は,著書『自由民権』(岩波新書 1981)の中で次のように語る。ちなみにこの『自由民権』は板垣退助らの自由民権運動からGHQ草案ができるまでの過程が丁寧にまとめられており,日本史受験者におすすめしたい一冊である。

(敗戦直後、GHQから日本国憲法を「押しつけられた」という意見に対して)もちろん、本来なら日本人民の手で旧権力を打倒し、みずからの政府を組織し、そのうえでみずからの憲法を創造すべきであったが、敗戦直後の日本国民には、その力が決定的に足りなかった。そのために生じた不幸な事態である。しかし決して、明治憲法のように反動勢力によって人民が押しつけられたものとは性質が違う。たとえ、ささやかな流れであったとはいえ、自由民権以来の伝統が、敗戦後の民間草案などを通して現憲法に生かされ、しかも、その後35年、主権者たる国民の大多数から一貫して支持されてきたということの中に、現日本国憲法の正当性の根拠があるのであって、いつまでも成立事情などによって左右されるものではない。

「レジ袋有料 来年4月にも」

本日の東京新聞夕刊に,プラスチックごみによる海洋汚染への対処として,経済産業省が音頭をとって,来年4月にもレジ袋の有料化を実施するとの記事が掲載されていた。
記事内容には全く問題がないのだが,深刻な海洋汚染問題に対し,レジ袋の袋の削減だけで事足れりという安易な考えは否定しておきたい。今現在も福島第一原発事故の汚染水が海洋に流出し続けている。また,住民の意向を無視した辺野古基地建設に伴い,水質汚染,生態系の破壊も進行中である。

政治的・外交的なアピールを優先したり,安直に解決策を矮小化したりするのではなく,数字的データに基づいた有効な海洋汚染への解決策を提示したい。

それにしても,レジ袋が数十円になったら,スーパーやコンビニのレジの風景も大きく変わることだろう。

『週末アジアでちょっと幸せ』

下川裕治『週末アジアでちょっと幸せ』(朝日文庫 2012)を読む。
朝日新聞社のウェブサイトに連載されたコラム「週末アジア旅」を元に,新たに書き下ろされたものである。
タイトルにある通り,大それた冒険ではなく,週末に飛行機やバスを乗り継いで名もないアジアの土地をふらっと旅するおじさんの旅行記である。韓国,台湾,マレーシア,シンガポール,中国,沖縄,ベトナム,バンコクの8章で構成されている。その中で,中国の甘粛省とウイグル自治区の境にある星星峡が興味深かった。実際現地に行ったらほとんど人もいない場末の集落に過ぎなかったというオチなのだが,ウイグル自治区と甘粛省の格差や重々しい警備など,現代の中国事情を顕にしている。

「都市の局地的豪雨」

本日の東京新聞朝刊記事より。
ゲリラ豪雨ないし局地的豪雨でも,雨が降る仕組みは授業中に説明した通りです。但し,都会は熱をためやすいコンクリートやアスファルトにより地表面が暖められるため,急激な上昇気流が発生することになる。これに加えて上空に寒気が入ってきたとき,気温差の拡大により不安定な積乱雲が発生し,1時間に100ミリを超えるような猛烈な雨が降ることになる。また,コンクリートやアスファルトは水を通しにくいので,地下鉄の通路や地下街に雨水が流れ込む都市型災害を引き起こしやすい。

この点は地学基礎と内容が重なります。都市型災害は他にも事例があるので,押さえておきたい。

「日本最西端 260㍍北北西へ」

本日の東京新聞朝刊に,日本の最西端を与那国島の西沖にあるトゥイシに変更するとの記事が掲載されていた。国連海洋法条約で,沿岸国は自国の基線から200海里(370km)内の水産や鉱物資源をに関する独占的な権益を有する排他的経済水域(EEZ)が認められている。東シナ海において改めて日本のEEZを知らしめようとするものである。しかし,記事にある通り,やっと満潮時にやっと顔を出すような岩を日本の国境線とするのはあまり好ましい判断ではない。このような大勢に影響がないのに,せせこましい国境認定をしてしまうと,他国の政策を批判ができなくなる。すでに沖ノ鳥島のような「無理」をしているのに,同じような無理を重ねることに意味があるのだろうか。

ちなみに日本最南端は沖ノ鳥島,最東端は南鳥島,最北端は択捉島となっている。沖ノ鳥島の現実の姿と,容易に足を踏み入れることの出来ない択捉島の歴史は確認しておきたい。