本日の東京新聞夕刊にナスカの地上絵に関する記事が掲載されていた。
南米ペルーの地上絵は紀元前2世紀から8世紀にかけて栄えたナスカ文明の時代に描かれたものと推測されている。
歴史ロマンはさておき,地理選択者は,なぜ2000年近くも地上絵が残されていたのかという疑問を大切にしてほしい。少し見にくいが以下がナスカ周辺の雨温図である。ナスカは砂漠気候(BW)に属し,寒流のペルー(フンボルト)海流の影響を受けて,ほとんど雨が降らない。年平均降水量はたったの4mmであり,降雨によって土が流されたり,植物や動物によって荒らされることがない。そうした好条件(?)が重なって,ナスカの地上絵が残されたのである。記事にあるように雨乞いを目的にペリカンを描いたというのも納得である。
なお,地理的に補足すると,寒流が沿岸を流れる地域では,海上近くの空気が冷やされ,上昇気流が起こらないために、雨が降りにくくなる。特に地球上で最も強い寒流であるペルー海流が流れる地域は乾燥度が強くなる。ペルーの南にあるチリのアタカマ砂漠や,アフリカ南西部のナミブ砂漠も合わせて覚えておきたい。また,エクアドル沖合のガラパゴス諸島も赤道直下に位置するが,やはり寒流の影響で降雨は少なく,イグアナやゾウガメなどの乾燥に強い生き物が誕生している。世界の海流の地図もすぐにイメージできるようにしておきたい。