月別アーカイブ: 2018年7月

『アジアの環境問題と日本の責任』

宮本憲一編『アジアの環境問題と日本の責任』(かもがわ出版 1992)を読む。
日本だけでなく、韓国、マレーシア、台湾のレポートを中心に、「公害輸出」とも呼ばれる日本企業の勝手な経営戦略やアジア各国の環境政策の具体的な問題点が報告されている。特にマレーシア・ボルネオ島のサバ州とサラワク州における木材伐採は目を覆うばかりである。マレーシア政府と日本企業が一体となって、再生不可能なほどに熱帯雨林の80%が伐採され、森の中で暮らすペナン族へ迫害を強めていく様子は、映画「アバター」の世界そのままである。

近年はマレーシアからの木材輸入は減少しているが、日本は国土の67%が森林に覆われているので、まずは日本国内で官民一体となって木材の自給自足のあり方を検討するべきである。編者の宮本氏も「持続可能な発展」を目指す日本型環境モデルを提唱すべきだと述べる。

竹の塚駅ポタリング

仕事の帰りに竹の塚駅周辺まで足を伸ばした。
1993年の春から夏にかけて4ヶ月間弱だけ暮らした町である。
自転車で新聞を配り、集金に回り、教習所に通い、銭湯を利用した町である。
当時住んでいたアパートを探したのだが、記憶が曖昧で皆目見当がつかなかった。
記憶の微かな糸を手繰り寄せるに、20年ほど前と10年ほど前にも竹の塚駅周辺を散策している気がするのだが。
二十歳の頃からの人生の距離感を感じながらペダルを回した。

『図説 アマゾン』

芝生瑞和・文、桃井和馬和・写真『図説 アマゾン:大森林の破壊』(河出書房新社 1992)を読む。
アマゾンというと、今でも自然豊かな熱帯雨林というイメージが強い。しかし、アマゾン地域は数十億年経た地球最古の岩石層である安定陸塊に位置し、ブラジル楯状地とギニア楯状地という岩石塊の間にある。地表は生物の宝庫でも数十メートル掘り下げれば不毛な岩石が眠るだけである。
しかし、安定陸塊ゆえに鉄鉱石や金、マンガン、錫、ダイヤモンドなどの鉱産資源が豊富に産出する。アマゾン東部にある世界最大のカラジャス鉱山では、鉄鉱石のほかボーキサイトも発見され、アルミニウム工場も下流に建設されている。また、アルミニウムの精錬には大量の電力が必要となるため、工場を稼働するための大型ダムが周辺にいくつも建設されている。日本にも大量に輸出されている鉱業のために、土壌が破壊され、河川に水銀が漏出し、生態系が破壊され、先住民族が追われ、そして地球環境全体に大きな影響を及ぼす結果に繋がっていく。
本書では、1992年4月にリオ・デ・ジャネイロで開催された「環境と開発に関する国際連合会議(地球サミット)」の精神やアマゾンで暮らすインディオ・カンパ族の生活様式に習い、再生可能な範囲でのほどほどの開発と日本を始めとする先進国の責務を訴える。

『桜田門外ノ変』

dTVで配信されている映画、佐藤純彌監督、大沢たかお主演『桜田門外ノ変』(2010 東映)を観た。
江戸幕府大老・井伊直弼が暗殺された「桜田門外の変」に関わった17名の水戸の脱藩者と薩摩藩士のその後を描く。井伊直弼襲撃のシーンを始め、史実を丁寧に再現しているのだが、その分盛り上がりに欠け、中盤以降は飽きてしまった。
桜田門外の変というと、日本の体面を潰し日米修好通商条約を結び、更に安政の大獄で反対派を粛清するといった強権を振るう井伊直弼に対し、攘夷の熱を帯びた水戸の若い浪士たちが後先考えずに行動を起こしたものだと思っていた。しかし、計画当初は、井伊直弼襲撃後、薩摩藩より3000名を率いて上洛し、天皇の協力を得て幕府に政治改革を迫るというものだった。また井伊直弼の首を掻っ攫ったのは薩摩藩の有村次左衛門であった。当日の襲撃手順を含め、念入りに計画されたものだったと初めて知った。
最後に桜田門を通る明治天皇の姿と、現在の国会議事堂の景色を重ね合わせることで、桜田門外の変で殉じた水戸藩士たちの思いが、明治時代を越えて現在にも脈々と受け継がれているという原作者のメッセージが込められる。

「再生エネで地域復興を」

本日の東京新聞朝刊に、太陽光を中心に小水力や風力発電にも取り組む会津電力の佐藤弥右衛門社長のインタビュー記事が掲載されていた。佐藤氏は次のように語る。

 日本人は事故の影響の大きさを身をもって知ったのだから「原発ゼロ」が政策の出発点のはずです。実際、原発が全て止まっても深刻な停電は起きていません。大手電力が苦しくなるから原発を稼働するというのは本末転倒です。

さらに、再生エネルギーのありかたについて次のように語る。

 再生エネを盛り上げることで地方を自立させるという視点が忘れられています。これまで地方の原発や巨大なダムを使い、大規模集中型で発電した電気が都会に送られてきました。福島県はその典型です。豊かな自然が搾取される代わりに補助金が配られる植民地型構造で、地方の中央頼み体質も助長しています。

太陽光などの再生エネルギーは地元の発電会社や家庭でも発電でき、地域ごとに電気を自給自足する小規模分散型。自然の恵みは地域に還元され、雇用も生んで復興や自立を促します。会津電力も5年で発電所が77カ所の増え、従業員も若い人を中心に約20人に増えました。

「大規模集中型」は1カ所の発電所が事故を起こすと停電の影響が広域に及美ます。「小規模分散型」は地域内の無数の小さな発電基地が送電線で結ばれ、電気を融通し合う仕組みなので、1カ所が事故を起こしても全域での停電はありません。ドイツなどでは送電ネットワーク技術の進展でこれが実現しています。日本では大手電力保護が優先され、世界で当たり前のことをやろうとしません。

佐藤氏の「本末転倒」という言葉が印象に残る。ここ数年のエネルギー政策はまさに「本末転倒」である。コストのかかるリスクの大きい原発を優先し、コストもリスクも小さい再生エネルギーは普及させまいとあの手この手で妨害にかかる日本政府のあり方そのものを表している。