芝生瑞和・文、桃井和馬和・写真『図説 アマゾン:大森林の破壊』(河出書房新社 1992)を読む。
アマゾンというと、今でも自然豊かな熱帯雨林というイメージが強い。しかし、アマゾン地域は数十億年経た地球最古の岩石層である安定陸塊に位置し、ブラジル楯状地とギニア楯状地という岩石塊の間にある。地表は生物の宝庫でも数十メートル掘り下げれば不毛な岩石が眠るだけである。
しかし、安定陸塊ゆえに鉄鉱石や金、マンガン、錫、ダイヤモンドなどの鉱産資源が豊富に産出する。アマゾン東部にある世界最大のカラジャス鉱山では、鉄鉱石のほかボーキサイトも発見され、アルミニウム工場も下流に建設されている。また、アルミニウムの精錬には大量の電力が必要となるため、工場を稼働するための大型ダムが周辺にいくつも建設されている。日本にも大量に輸出されている鉱業のために、土壌が破壊され、河川に水銀が漏出し、生態系が破壊され、先住民族が追われ、そして地球環境全体に大きな影響を及ぼす結果に繋がっていく。
本書では、1992年4月にリオ・デ・ジャネイロで開催された「環境と開発に関する国際連合会議(地球サミット)」の精神やアマゾンで暮らすインディオ・カンパ族の生活様式に習い、再生可能な範囲でのほどほどの開発と日本を始めとする先進国の責務を訴える。
日別アーカイブ: 2018年7月22日
『桜田門外ノ変』
dTVで配信されている映画、佐藤純彌監督、大沢たかお主演『桜田門外ノ変』(2010 東映)を観た。
江戸幕府大老・井伊直弼が暗殺された「桜田門外の変」に関わった17名の水戸の脱藩者と薩摩藩士のその後を描く。井伊直弼襲撃のシーンを始め、史実を丁寧に再現しているのだが、その分盛り上がりに欠け、中盤以降は飽きてしまった。
桜田門外の変というと、日本の体面を潰し日米修好通商条約を結び、更に安政の大獄で反対派を粛清するといった強権を振るう井伊直弼に対し、攘夷の熱を帯びた水戸の若い浪士たちが後先考えずに行動を起こしたものだと思っていた。しかし、計画当初は、井伊直弼襲撃後、薩摩藩より3000名を率いて上洛し、天皇の協力を得て幕府に政治改革を迫るというものだった。また井伊直弼の首を掻っ攫ったのは薩摩藩の有村次左衛門であった。当日の襲撃手順を含め、念入りに計画されたものだったと初めて知った。
最後に桜田門を通る明治天皇の姿と、現在の国会議事堂の景色を重ね合わせることで、桜田門外の変で殉じた水戸藩士たちの思いが、明治時代を越えて現在にも脈々と受け継がれているという原作者のメッセージが込められる。