山下輝夫編著『大地の躍動を見る:新しい地震・火山像』(岩波ジュニア新書 2000)を読む。
東京大学地震研究所の設立75周年記念事業の一環として企画されたもので、地震や火山の仕組みや地球の内部構造、また、GPSを用いた地殻変動や海面高度の測定方法など、1章ずつ9人の教官が分担して執筆している。東大地震研究所は関東大震災の2年後に設立されたので、「地震」という名称を冠しているが、当初から火山噴火も研究の対象であり、現在では固体地球科学の研究所として、世界有数の規模をもつまでになっている。
代表著者の山下氏によると、地震学は一つ一つの物事が互いに影響を及ぼしあうことにより全体が成り立っている「複雑系」の学問である。地震はある日突然起こるものでなく、年数センチの速さで動き続けている地球のプレートやマントルの動きの積み重ねの結果なのである。また、地殻の対流だけでなく、太陽エネルギーによる大気や海流の動きでも地球内部は常に揺らされているし、月の引力によって海だけでなく大地も何十センチと上下運動を続けているのである。大規模災害をもたらす地震の研究に、地震計にも記録されない微弱な地球の揺れのデータを揃えていくことが大切なのだ。
およそ中高生に理解できないような専門的な話もあったが、地震学の奥深さは良く伝わってきた。