浅野いにお『素晴らしい世界』(小学館サンデーGXコミックス 2004)全2巻を読む。
東京都区内の小田急線沿いの町を舞台に、生きる意味や目的を見失いがちな若者たちの姿をリアルに描く。
クラスから浮いてしまっている中学生や、周りがどんどん就職していく中でダラダラと日常を送るフリーター、いつまでも芽が出ない売れない漫画家、将来に明るい希望も見出せず勉強も捗らない浪人生など、社会への違和感や自身の存在への不安を抱える若者の群像劇となっている。
先日読んだ「ひかりのまち」とよく似ているのだが、こちらの方は最後は生きる熱意や生きることへの肯定的な結末で締めくくられており、読後感が大変良かった。アマゾンのレビューを見ると賛否両論あるようだが、タイトル通りの素晴らしい作品だった。
かつて自分が浪人生の頃に感じていた「置いていかれる」「進んでいかない」という、胸につっかえるような、将来の全てを司るような真っ黒い不安を思い出しながらページを繰っていった。出来得ることならば、20数年前の自分に渡したい一冊である。
『素晴らしい世界』
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