日別アーカイブ: 2016年2月20日

『琥珀の道殺人事件』

内田康夫『琥珀の道殺人事件』(角川文庫 1989)を読む。
岩手県久慈産出の琥珀が古代奈良まで運ばれていたという言い伝えをモチーフとした旅情ミステリーである。
いつもの通り、名探偵浅見光彦が現地の市役所の商工課や警察署に赴いて、観光情報や事件の情報を手に入れる場面から事件捜査が始まる。ふと、現在はホームページでの調査が当たり前になったが、ほんの20数年前までは、実際に現地に行って歩き回ったり話し込んだりして情報を得ていたのだなあと考え込んでしまった。

『高く手を振る日』

黒井千次『高く手を振る日』(新潮社 2010)を読む。
学生時代に一度だけキスをしたことのある男女が、70代になリ人生の最終局面を迎える中で、ふとしたキッカケで再び出会い、恋愛模様へと発展していく。「老いらくの恋」と言ってしまえば身も蓋もないが、自分の人生の「終着」と過去の若かりし頃への「執着」というの2つのテーマが並行して進んでいき、久々に読み応えのある作品であった。
主人公の年齢に合わせるように、ゆっくりと話が展開していく。細かいところはすっ飛ばして読む若い読者に対して、「そんなに焦って読むなよ」という作者の言葉が聞こえてきそうだ。