ランス・アームストロング『ただマイヨ・ジョーヌのためでなく(原題:It’s Not About the Bike)』(講談社 2000)を読む。
自転車選手権で優勝するなど順調に世界一流の自転車選手の道を歩んでいた著者であるが、25歳の時に生存率20%以下という睾丸癌を発病してしまう。そして、一時期は生死の境を彷徨う厳しい病気との闘いを克服し、復活の翌年に自転車レース最高峰のツール・ド・フランスで個人総合優勝(その後取り消されている)を果たすまでの半世紀が綴られている。
先週以来疲れが続いたためか、また、翻訳の自叙伝を読むという経験自体があまりなかったためか、1週間くらいかけてやっと読み通した。この作品が仮に小説や映画であるとすれば、笑っちゃうくらいの典型的な青春物語である。苦境の中で発揮される本人の努力や周囲の温かい支え、勝負の駆け引きなど、三文小説にありがちな仕立て満載の作品となっている。
その後のランス氏の経緯を考えると、感想も素直には出てこない。しかし、素直な中学生や高校生が手に取る(取らされる?)「偉人伝」として読むならば、良質な作品として評価して良いだろう。