月別アーカイブ: 2013年7月

『自立日記』

辛酸なめ子『自立日記』(洋泉社 2002)を読む。
1999年1月から2001年12月までの、当時はまだ余り一般的ではなかったブログの抜粋である。
同世代の彼女のバイタリティや穿ったものの見方に感心するやらあきれるやら、一気に読み終えた。
中高や大学時代の友人の話や、家族、仕事の話、引っ越しの顛末など、特段何も無い平凡な日常生活の話なのだが、自虐ネタや女性という立場を上手く利用した語り口で、ついついひき込まれてしまった。私の大好きな女子アナ膳場貴子さんとも高校時代の同級生とのこと。彼女の素の姿に接していたなんて。うらやましい。。。

印象に残った日記を拾ってみたい。

2000年7月25日(火)
このままエスカレートすると、わたしもキティラーになっちゃうかも……。好きなものはキティちゃんと浜崎あゆみという、かなりやばい女に……。
キティちゃんの、節操なくいろいろなラインを展開する商品戦略と、浜崎あゆみの、シングル曲のリミックス・バージョンを狂ったように展開するやり方は、似ているような気がする。資本主義の行き着く先なのでしょうか? 消費者が全部買って付いていこうとしたら、経済的に破綻することでしょう。これが日本経済が抱えている脆さの構図なのです。

ちょうど2000年半ば、モーニング娘。やSPEEDが流行り、ケータイやPHSが爆発的に普及していた頃である。キティちゃんと浜崎あゆみの「コピー商法」であるが、それが日本経済の不況の一端を示すと呟く辛酸なめ子さんの視点は鋭い。
ついでに、もう一つ。

2001年5月11日(金)
(浦和から都内への引っ越し手続きが滞ってしまい)もう一生、さいたま市から出られないのでしょうか? それもいいかもしれません。が、さいたま市という名称は廃止してもらいたいのです。そのために運動を考えてみました。
それは「さいたま市」の宛先の人に郵便を送る時に、「きんたま市」と間違えたふりをして書くのです。または「さおたま市」でも良いです。そして、送り先の女性が郵便物を持って「嫁入り前の身体なのに、こんな卑猥な郵便物ばかり届くんです」と、涙ながらに行政に訴えます。
その被害者が、一人、二人、十人、百人、千人と増えていけば、行政を動かすことも可能だと思います。「さいたま市」は卑猥な単語と紛らわしいので改称しよう、ということになるかもしれません。なぜなら、歴史は女の涙で作られているのです。
ですから、まず周りの人に、郵便を送る時は宛名に「きんたま市」と書いてください、と呼びかける草の根運動から始めようと思います。

これまた、当時の「さいたま市」というひらがな市名に対する違和感が懐かしくよみがえってきた。大学生が酒の席で交わすような話に、思わず笑み(江美)がこぼれてしまった。

ステラタウンへ

いよいよ梅雨が明け、夏真っ盛りの日差しと湿気にあふれた一日であった。
昼から家族を連れて、大宮のステラタウンへ出かけた。この夏こそ「一日一冊」、40日で40冊を達成したいと思い、ブックオフで大量に本を仕入れてきた。ここ2年ほど忙しい夏が続いたので、この夏こそは通常の夏に戻していきたい。
上の子はペンダントを作るおもちゃを、真ん中の子はレゴブロックを購入。

先ほど、新聞の折り込み広告で入ってきたクラブツーリズムのバスツアーを予約した。春日部発「三鷹の森ジブリ美術館と葛西臨海水族園 都内ホテルで約30種バイキング」というツアーである。ジブリ美術館は夏休み人気が集中するので、すぐにパソコンで手続きをとった。

相も変わらず仕事に追われ忙しい夏になりそうだが、読書と家族サービスの両立を図っていきたい。

『新聞記者の現場』

黒田清『新聞記者の現場』(講談社現代新書 1985)を読む。
随分昔に買ったもので、古本独特の黴臭い匂いが何とも言えず心地よい。
新聞記者の仕事の紹介に始まり、自身の記者時代の苦労や歓び、新聞記者としての心構えや、報道のあり方にまで筆が走っていく。1950年代、60年代の話が中心であるが、ファクスや携帯電話、インターネットもない時代に、「黒田ジャーナル」と名を馳せた読売新聞大阪本社社会部長を歴任した著者が、現場や関係者宅を丹念に回り、他社に先駆けして記事にまとめていく新聞記者の本道について力説されている。それは、新聞が「社会の公器」として大きな力を持ち得た時代ゆえの話かもしれないが、ネット上の噂が世間を駆け巡る現在だからこそ、インタビューや訪問取材など現場にこだわった報道の基本姿勢として大切にしていきたい。

『花腐し』

第123回芥川賞受賞作、松浦寿輝『花腐(くた)し』(2000 講談社)を読む。
表題作の他、『ひたひたと』という短編が収められている。
将来が見えない現在と、

『テルマエ・ロマエ』

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地上波で放映された、阿部寛・上戸彩主演、武内英樹監督『テルマエ・ロマエ』(2012 東宝)を観た。
古代ローマ人が現代日本の公衆浴場に突如表れ、カルチャーショックを受ける日常のほのぼのとしたドラマ部分の前半は良かったのだが、後半に入って、戦争やら皇位継承といった大掛かりなセットでの撮影シーンになると、興味が薄れていった。ドラマ『アットホーム・ダッド』で魅せた、阿部寛さんのシリアスでコミカルな演技が最後まで光っていた。