第26回文藝賞受賞作、第3回三島由紀夫賞受賞作、比留間久夫『YES・YES・YES』を半分ほど読み進めたが挫折した。
前に団鬼六氏の作品を読んだので、今度も倒錯した性愛文学を読んでみたいと思い手に取ってみた。ゲイバーに勤める少年が男性との性行為を通じて「大人」に近づいていくという心境小説である。かなり露骨な性描写が続くせいもあってか、内容が頭に入ってこなかった。
一方、本野本の内容よりも、帯に載っていた大庭みな子さんの文藝賞選後評の文章が印象的であった。まあありがちな選評だとも思うが、この流れるような簡潔な文体は是非とも真似したい。
ホモセクシャルの世界を扱ったものだが、男女が絡み合う愛欲の世間では思い込んだ通念に支配されて見えにくい人間の姿形がへん に鮮やかに浮かびあがってくる。結果として読後の残像は、男色家たちの情景というよりは、自分をもて余して奇怪な悲しみに喘いでいる人間の滑稽な姿なの だ。