三浦展『貧困肥満:下流ほど太る新階級社会』(扶桑社新書 2009)を読む。
年収二百数十万円程度でフリーターや派遣労働を続ける若者の食生活を追ったルポである。この「下流」とは、筆者の言葉を借りれば、「単にお金のない人では なく、生活への意欲がない人」のことである。多少の小金がありながら、マクドナルドやファミレスなどの「ファストフード」で食欲を満たしてしまい、自分で 食材を選び、料理する習慣も関心もない人たちをさす。
読みながら、油や塩分、添加物まみれの食事を好んでいる自分自身の姿が頭をちらついて仕方なかった。このままでは私も生活習慣病まっしぐらである。少し食生活を改めたい。
[下流は太る]チェックポイントとして次の項目が示されている。
・年収(万円)が年齢の10倍未満だ
・未婚だ
・自炊せず、外食が中心だ
・食事の時間、回数が不規則だ
・移動は車やバイクが多い
・面倒くさがり、出不精だ
・食事はひとりで摂ることが多い
・片手で食べられるものを好む
・生ものを食べていない
・セックスパートナーがいない
また、筆者は次のように述べる。
自分で料理するということは、素材を選び、道具を使うということです。それは再び大げさに言えば、奪われた生産手段を取り返すこ とです。ファストフードや冷凍食品などは、一見便利だが、素材と道具を人任せにするということであり、本来自分が持つべき素材と道具を奪われているという ことです。つまり便利さに負けて素材と道具を奪われた人間は、実は搾取されているのです。そして、意欲がなくても腹一杯食えて太れるファスト風土的下流社 会にどっぷりつかった人間は、搾取されているという実感を持たぬまま、便利、お手軽という魔法にかけられて、ついつい便利で安直な生活を選択してしまうの です。
しかしそのように、目の前に流れてくる餌を食べているだけでは、人間が家畜になったのと同じでしょう。そういう社会は、人間ブロイラー工場であり、人間養豚場です。