白鴎大学の生徒募集担当の方より貰った,楽月慎『思川バルーン』(幻戯書房 2008)を読む。
作者自身の白鴎大学での楽しい思い出と,時代の波に流される学生時代の儚い青春が,白鴎大学の脇を流れる思川周辺の光景と重なる。栃木県の小山周辺に住むごく平凡な若者たちのごく平凡な日常が描かれる。断片的な思い出を繋いだだけの起承転結のない小説であるが,観光橋や大平山の風景が目の前に浮かんできて,読者自身も登場人物たちの脇にいるような錯覚に陥る。また作者も登場人物も1994年に大学に入学しており,ちょうど私と同じ時代に学生時代を過ごしたのかと思うと,親近感を抱いた。そう思うと,この小説も夏目漱石の『三四郎』の白鴎大学バージョンと称して良いのかもしれない。
そもそも,就職活動を始める前から就職難,氷河期,低倍率,三人に一人とか騒がれているんだから,みんな一斉になにもしなければよかったんだ。そうすれば団塊世代のオヤジたちが,「やってられっか,くされ大学! 金返せ,バカ野郎。こっちは苦労して子どもを大学に行かせてんだ。だから,なにがなんでも就職させろっ,ボケ。窓,割るぞ,ゴラァッ」と,いつのまにか導入されたデスクの上のウィンドウズ95の画面をぶち壊し,会社を抜け出してヘルメットを被り,全国至るところの大学で暴れてくれたかもしれない。……かも,しれない……。