梁石日(ヤン・ソギル)『Z』(毎日新聞社 1996)を読む。
一人の在日韓国人の作家を主人公が、日韓政治の狭間に未だに生息する旧日本軍や日本の右翼と通ずる韓国の闇政治に踏み入っていく。話はフィクションではあるが、金大中以降一切否定されてきた、韓国の軍事政権を下支えしてきた反民主勢力の実態が浮き彫りになっている。
途中、時代が大きく遡り、日本の朝鮮半島支配が1945年8月15日で突然終わり、旧ソ連が平壌を実質的に支配する情勢の中で米国の息のかかった李承晩政権が誕生するまでの悲劇が挿入される。どこまでが事実なのかは判然としないが、朝鮮戦争に至るまでの韓国国内の残虐非道な人権蹂躙行為はきちんと振り返らなければならない。