読書」カテゴリーアーカイブ

『世代間格差ってなんだ』

城繁幸・小黒一正・高橋亮平『世代間格差ってなんだ』(PHP新書 2010)を読む。
若者の投票率が低いので、高齢者の票を狙って、日本では極端な高齢者優遇政策が実施されている。雇用や社会保障でも高齢者に手厚く、子育てを担う20代から30代の若者が冷遇されている。そうした世代間格差の現状分析と、若者の政治参加に向けた具体的なアクションが提示されている。

また、就業形態別の5年の婚姻の有無の調査で、正規雇用に比べ、男性の非正規雇用者の婚姻は半分くらいに留まっているとのショッキングなグラフが掲載されていた。また、少子化というと、女性の社会進出がその元凶のように言われてきたが、最近では、出生率と女性の労働力率はプラスの相関性に変わってきているとのこと。そのため、少子化対策を進めていく上で、正規雇用の仕事の拡充と、仕事と出産・育児が両立できる生き方の実現が必要となってきている。

『30歳からの「東大脳」のつくり方』

石浦章一『30歳からの「東大脳」のつくり方』(ベスト新書 2009)を読む。
いささか刺激的なタイトルであるが、人をひきつける脳の仕組みやビジネスで成功する頭の使い方、また脳を活性化するための健康的な生活の提案など、生徒に話しかける題材として適当な内容であった。

冒頭で著者は東大生を教える立場から見えてきた東大生の特徴−「東大脳」−として次の10点を挙げている。

  1. 情報を適確に収集する
  2. 正確に記憶する
  3. 本を読む習慣がある
  4. 自ら意欲を高められる積極性がある
  5. 専門性を磨いている
  6. 集中力がある
  7. 生活が規則正しい
  8. きちんとした食事を摂る
  9. 運動が好き
  10. 素直である

著者は、上記の10項目それぞれについて具体的な目標や数値目標を設定し、小さな成功体験を積み重ねながら、報酬を自らに与える事で、「正の回路」のつながりを強化し続けることで、誰しもが「東大脳」になれると述べる。

『食料問題ときみたち』

吉田武彦『食料問題ときみたち』(岩波ジュニア新書 1982)を読む。
衆院が解散し、原発、消費税とTPPの3点が大きな争点となっている。「TPPから日本の食と暮らし・いのちを守るネットワーク」のホームページを見ると、食料自給率はTPPの参加により40%から13%まで下落するとの予想まで出ている始末である。今後のあるべき食料政策を国民的議論の俎上に乗せた上で、衆院選挙を捉えていかなければならない。

アメリカ政府が1980年に発表した『西暦2000年の地球』で発表されたタイの環境破壊の記載が興味深かった。以下、孫引きです。

タイのアメリカ大使館はつぎのように報告している。薪の拾集、焼畑農業、保護森林への非合法的な大規模な侵入といったことがあいまって、タイでは完全に地上をおおうような森林は、1987年までに事実上はぎ取られてしまい、もっとも楽観的に予想しても、1993年以降には、もはやタイに有効な森林が残存する見込みはない。森林を伐採した結果として、タイは、洪水と乾燥にいっそう苦しむようになり、可耕地域の面積は表面的に拡大しているようにみえても、土壌浸食がすでにはげしく、この状況は今後さらに苛酷になるであろう。

Wikipediaによると、昨年発生したタイの大洪水であるが、自然災害による経済損失額の大きさでは、東日本大震災、阪神大震災、ハリケーン・カトリーナに次ぐ史上4位であったそうだ。しかし、この「人災」はすでに30年前に予想されていることであったのだ。

TPPに完全参加しても輸出は増えず、日本の農業が破壊されるだけ、ただそれだけである。しかし、日本の田んぼは米を作るだけでなく、大雨時には貯水ダムの役割を果たすなど、環境保全の一環を担っている。タイの例を見れば分かる通り、日本の農業、とりわけ稲作の破壊は、そのまま環境の破壊へ繋がっていく。

筆者は最後の章で、次のように述べる。30年前の書かれた中高生向けの新書の一節であるが、現在の政治家に投げかけたい言葉である。

21世紀にむかって、世界の食料事情が必ずしも楽観できず、国ごとの不平等がひろがると予想されているとき、少しでも国内生産を高めて輸入を減らすことは、私たち自身のためばかりでなく、未来の世界、とくに発展途上国の飢えた人々に対する日本の責任ではないだろうか。

『「源氏物語」男の世界』

田辺聖子『「源氏物語」男の世界』(講談社文庫 1996)を読む。
教材研究のために手に取ってみた。薫、桐壺院、頭中、朱雀院、そして玉鬘に言い寄った大夫の監の5名を取り上げ、それぞれの一代記として物語が再構成されている。 薫のひねくれようや桐壺院の配慮、頭中の政治的意識など、女性視点からは描かれない男性の心理に迫っている。田辺さんの創作的なくだりも多々あるが、物語として楽しむことができた。
授業の中の雑談として活用してみたい。

『源氏物語:眠らない姫たち』

由良弥生『源氏物語:眠らない姫たち』(三笠書房 2001)を読む。
葵の上、藤壷、六条の御息所、夕顔、末摘花、朧月夜、紫の上の7人の女性を取り上げ、多少の脚色を交えて彼女たちの心の内を描く。特に葵の上と紫の上の二人の女性の話は良かった。教材研究のために手に取った本であるが、私自身が一番楽しむことができた。