読書」カテゴリーアーカイブ

『後宮小説』

第1回日本ファンタジーノベル大賞受賞作、酒見賢一『後宮小説』(1989 新潮社)を読む。
中国を舞台とした全くのファンタジーなのだが、歴史書を元にして作者と一緒にドラマの世界を漫遊するという形をとっており、歴史冒険小説を読んでいるようなワクワク感があった。一応物語の中では、1600年代前半という記述があるので、明末の李自成の乱を元にしたのかとも思ったが、唐の時代の安史の乱にも近いし、辛亥革命を思わせるようなところもあり、不思議な雰囲気の小説であった。

『早朝座禅』

山折哲雄『早朝座禅:凛とした生活のすすめ』(祥伝社新書 2007)を読む。
禅行については「素人」の著者が、早朝の3分だけの「ファスト」座禅を説く。また、日本文化や文学、歴史を縦横に駆け巡りながら、宗教的な視点から現代社会を論じている。その中で、ストレスの話が興味深かった。著者は周囲の人と比べるから不満や不安がたまってしまうと述べ、そうした「横」のつながりだけでなく、祖先や師匠、自然といった自分の狭い世界を超越する存在と向き合い、自分をさらけ出すことが大切だと述べる。

 他人との比較には際限がない。自分の幸福度を他人と比べているかぎり、決して不満がなくなることはないだろう。隣の家より高級な自動車を買ったとしても、さらにその隣の家は同じような自動車を二台持っているかもしれない。いくら年収が増えても、上には上がいる。嫉妬心や不満は無限に続くわけだ。だからこそ、比較「地獄」へ向かう道なのである。
 ではこの「比較地獄」から脱出するにはどうすればよいか。私はそのために、人間関係の成り立ち方そのものを見直すべきだと考えている。いささか抽象的ないい方になってしまうが、「横」に広がっている人間関係に「縦」の軸を持ち込むことが、自分と他人を比較せずに生きていくのに必要だと思うのだ。

『センター試験超ラクラク突破法』

福井一成『センター試験超ラクラク突破法:2011年版』(エール出版 2009)を読む。
2年連続東大合格(文Ⅱ・理Ⅲ)した医学博士の著者が、センター試験攻略の「裏ワザ」と、「平均点狙いの勉強法」と「高得点狙いの勉強法」に分けて、全教科全科目において具体的な参考書や勉強の進め方を解説している。
一科目だけ読むとなるほどと思うのだが、どの教科科目の解説も代わり映えせず、暗記事項の徹底や、基礎的な問題集や参考書と、センターの実践問題集の二本立ての勉強法、予備校の活用の紹介が延々と続く。参考になるところも多いので、読む価値はあると思う。

『二重スパイ』

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具本韓『二重スパイ』(新潮文庫 2003)を読む。
十年以上前に観た同名の映画の原案である。ちょうど先日観た『シルミド』が金日成暗殺計画を遂行する「北派工作員」の話であったが、この『二重スパイ』は、その逆にあたる北朝鮮軍所属の「南派工作員」が主人公の物語である。映画の内容はすっかり忘れており、最後まで楽しむことができた。
北からも南からも追われる二重逃亡者を通して、当時の(そして今も続く)「先鋭なまでに対峙するイデオロギー」(本文より)の存在を感じることができた。

『きことわ』

第144回芥川賞受賞作、朝吹真理子『きことわ』(2011 新潮社)を読む。
25年ぶりに再会した貴子(きこ)と永遠子(とわこ)の再会シーンと回想シーンが連なる。主人公たちが現在に悲観することもなく、人生を考えるわけでもなく、淡々と話は展開されていく。技巧を凝らしたのか、現在の描写から過去の描写へとすーっと流れていくので、話の脈絡が妙に掴みにくかった。