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『小出裕章が答える原発と放射能』

遅ればせながら、小出裕章『小出裕章が答える原発と放射能』(河出書房新社 2011)を読む。
40年以上にわたって反原発運動に関わってきた京都大学原子炉実験所助教の小出氏が、一般の人から出された質問に答える問答形式で、3.11の原発事故の問題点を明らかにしていく。
何度聞いてもイメージが掴みにくかった、放射能のエネルギーがDNAを含めた体内の分子の結合を引き裂く被曝の実態や除染作業の効果について、具体的な数値を用いながら、先生が生徒に教えるように分かりやすく解説されている。
特に、被曝によるがんの発症率がぐんと下がる50歳台、60歳台の人たちが福島の農産物を積極的に食べ、福島の第一次産業を守るべきだという主張は興味深かった。突拍子もない意見のように聞こえるが、被曝の度合いや基準など正確なデータに裏付けされている主張だけに説得力がある。

『風車のある風景』

野村卓志『風車のある風景:風力発電を見に行こう』(出窓社 2002)を読む。
2002年当時の日本の各地にある風車の風景写真や風車の仕組み、風力発電の概要が収められている。
「ほとんどの風車の色は、淡く白っぽい単色が用いられ、背景の中で浮かび上がらない配慮がされています」と筆者は述べるが、写真を見る限り、日本の田園風景の中ではやはり浮き上がって見える。やはり日本では景観的にも騒音対策上も、海上に建てる方がよいであろう。

『ドイツは脱原発を選んだ』

ミランダ・A・シュラーズ『ドイツは脱原発を選んだ』(岩波ブックレット 2011)を読む。
フクシマの事故の後、ドイツのエネルギー政策が大きく転換した経緯について、分かりやすくコンパクトにまとめられている。
ドイツの脱原発の舵取りが決して難しいものではなく、日本も真似できるはずだという結論となっている。

『赤い雲伝説殺人事件』

akaikumo

内田康夫『赤い雲伝説殺人事件』(廣済堂文庫 1985)を読む。
山口県熊毛郡の上関原子力発電所の建設を巡る住民同士の対立から殺人事件が起きる。反対運動の中心となっている祝島の様子や生活環境、反対する動機などもきちんと描かれており、微妙なテーマであるが、作者の原発に対するスタンスは最後まで一貫している。
物語の最後でそれ以前の文脈を無視した急展開な種明かしで終わってしまい、推理小説としてはやや残念な作品となっている。しかし、過疎化著しい地域で補助金を餌に建設を迫り、中央の政官財に加え、地方やマスコミまでが一体となって原発政策をごり押ししていく危険性が随所に描かれており、社会派小説としてはよく出来た作品であった。
「祝島では中立という立場はない、意見を言わないということは原発賛成に回ることだ」という祝島の住人の言葉は重い。

『死に向かう地球』

江原達怡『死に向かう地球:加速する温暖化・砂漠化 最先端植林プロジェクト「スーパーポローニア」という選択』(現代書林 2007)を読む。
環境問題の本かと思い手に取ってみた。前半は温暖化や砂漠化について事例を交えて分かりやすく解説している。しかし、後半はスーパーポローニアという品種改良された桐の植林事業を手掛けている企業の紹介となっている。著者によれば、スーパーポローニアなるものは、4〜6年で生育し、CO2の吸収能力は杉の10倍以上もあり、しかも伐採したらすぐに発芽を繰り返し、建築材としても家具材としてもすぐれており、バイオエタノールも取れるという、まさにスーパーマンのような木なのである。
ネットで調べたところ、本書で紹介されていた植林事業を手がける会社には、既に詐欺商法として警察の手が入っているということであった。こういった地球環境への関心につけ入る悪徳ビジネスの輩は、これからも手を替え品を替え登場してくるのであろう。重々気をつけたい。