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『隠岐伝説殺人事件』

内田康夫『隠岐伝説殺人事件』(角川文庫 1990)上下巻を読む。
後鳥羽上皇が隠し持っていて、戦後のドサクサで闇に消えていった「源氏物語絵巻」の「末摘花」が発見されたことから、戦後の旧日本軍も絡んだ連続殺人事件が発生する。冒頭から「名探偵」浅見光彦が活躍する、内田作品の王道を行く歴史旅情ミステリーである。作者もあとがきで述べているように、最後はいつも通りドタバタで事件が解決していくが、いつかはゆったりと隠岐を訪れたくなった。

『日中2000年の不理解』

王敏(ワン・ミン)『日中2000年の不理解:異なる文化の「基層」を探る』(朝日新書 2006)を読む。
ちょうど諸子百家を扱っているところなので、教材研究として手に取ってみた。
中国河北省出身で、法政大学国際日本学研究所教授を務める著者が、感性文化を特色とする日本文化について分かりやすく論じている。
日中間の動物観や自然観、裸への意識、儒教、倫理観、風呂、禊の考え、転向など、具体的な事例からアジア文化圏の共通点や、中国と欧州の意外な類似点などを通して、特に自然との一体感を基底とする日本文化の特色について余すところなく説明している。
国際文化やら国際教養に関心を持つ若い学生に手に取ってもらいたい一冊である。

『琥珀の道殺人事件』

内田康夫『琥珀の道殺人事件』(角川文庫 1989)を読む。
岩手県久慈産出の琥珀が古代奈良まで運ばれていたという言い伝えをモチーフとした旅情ミステリーである。
いつもの通り、名探偵浅見光彦が現地の市役所の商工課や警察署に赴いて、観光情報や事件の情報を手に入れる場面から事件捜査が始まる。ふと、現在はホームページでの調査が当たり前になったが、ほんの20数年前までは、実際に現地に行って歩き回ったり話し込んだりして情報を得ていたのだなあと考え込んでしまった。

『高く手を振る日』

黒井千次『高く手を振る日』(新潮社 2010)を読む。
学生時代に一度だけキスをしたことのある男女が、70代になリ人生の最終局面を迎える中で、ふとしたキッカケで再び出会い、恋愛模様へと発展していく。「老いらくの恋」と言ってしまえば身も蓋もないが、自分の人生の「終着」と過去の若かりし頃への「執着」というの2つのテーマが並行して進んでいき、久々に読み応えのある作品であった。
主人公の年齢に合わせるように、ゆっくりと話が展開していく。細かいところはすっ飛ばして読む若い読者に対して、「そんなに焦って読むなよ」という作者の言葉が聞こえてきそうだ。

『「紅藍の女」殺人事件』

内田康夫『「紅藍の女」殺人事件』(講談社文庫 2000)を読む。
旅情ミステリーとして引っ張りながら、最後はどたばたと辻褄を合わせたように事件が解決していく。
山形の風景を頭に思い浮かべながら読むことができ、ひとときの「忙中の閑」を味わった。