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『明日香の皇子』

内田康夫『明日香の皇子』(講談社文庫 2003)を読む。
1984年に単行本として刊行された本の文庫化である。「自作解説」の中で著者本人が、「僕がとくに好きで、ぜひお勧めしたい内田康夫作品のトップクラス、五つの中に入る」と述べているように、力のこもった作品である。高校時代に読んだ五木寛之の『風の王国』を彷彿とさせる作品で、二上山を舞台としたところや、歴史の闇に迫っていくところなどよく似ている。しかし、『明日香〜』の方も、やや粗削りながらテンポよく話が展開していき一気に読み終えた。
いつか、明日香周辺の裏道を自転車でのんびり回ってみたいものである。

『〈こころ〉の定点観測』

なだいなだ編著『〈こころ〉の定点観測』(岩波新書 2001)を少しだけ読む。
精神保健に関わる医師を中心に10人の識者の評論集である。漠然たる「こころ」をテーマとして、各人が専門分野を自由に語っているだけの安易な編集で、あまり面白くない。なだいなだ氏の章だけ読んだ。

改めて、自分はこうした心理関係の文章は苦手であると思い知った。なだいなだ氏だけは社会の病理に言及するが、他の論評は個人の問題ないし周囲の人との関係性に終始する。琴線に触れるような心の内面や人間関係の問題を掘り下げるような内容にどうしても関心が向かない。社会人になって二十年、やっとそこに気付いた次第である。

『ロンドン橋物語』

出口保夫『ロンドン橋物語:聖なる橋の二千年』(東京書籍 1992)を読む。
1984年に刊行された『ロンドンブリッジ:聖なる橋の二〇〇〇年』(朝日イブニングニュース社)に加筆・修正したものである。テムズ河に架かりロンドンのシティとサザック地区を結ぶロンドン橋の歴史がまとめられている。年表も付されており、歴史の勉強にも良い。

♪ロンドン橋落ちた♪ の曲で有名なロンドン橋は、ローマ時代から存在し、サクソン人やノルマン人の手によって何度も架け替えられてきた。1209年に長さ300メートル、幅7メートルの石造のロンドン橋が完成している。当時の公共事業は修道院が担っていたこともあり、橋の中心には聖トマス・ア・ベケットの礼拝堂が建設されている。後年になると、数多くの店が橋上に居を構えるようになり、4階建ての建物が橋幅いっぱいに密集し、数百人が生活するようになっていった。現在でいうアーケード商店街のような雰囲気で、観光名所とも、また公開処刑の場ともなった。

清教徒革命の頃には、ピューリタンによって数多くのカトリック建造物が破壊され、聖トマス礼拝堂も粉々となった。ペストの流行や大火にも何とか耐え、600年以上もロンドンの中心を飾ることとなった。しかし、19世紀に入ると馬車の時代となるとあまりに通行に不便を来すようになり、1831年に幅17メートルの新しい橋にその地位を譲ることになる。しかし、モータリゼーションの到来で、1973年には中央6車線に両側5メートルの歩道を持った現在の橋に取って代わることになる。

橋の建設という規模の大きい事業は、国王の力も問われることになる。ロンドン橋を巡ってワット・タイラーらの農民一揆や、首長令、大憲章、クロムウェルの革命などにも触れられており、世界史の授業で使ってみたい素材であった。

『世界のともだち』シリーズ

子ども図書館で感想文を書いている間、偕成社80周年記念出版『世界のともだち』という子ども向けの本を読んだ。

加瀬太郎写真・文『世界のともだち イギリス 元気にジャンプ!ブルーベル』(偕成社 2015)を眺める。
ロンドン郊外に住む平均的な4人家族の日常風景が収められている。日曜日には家から車で30分ほどのところにある森でMTBを楽しむなど、生活レベルの高さがうかがわれる。

イギリスの夏は夜9時ぐらいまで明るいとあった。ロンドンは北緯51.3度に位置するので、日本の北緯35度(東京 札幌・43度)と比べ15度ほど北にある。ちなみに北極圏(北緯66.3度)では、夏至の日照時間が24時間となる。日本は7時過ぎくらいに陽が沈むので、ちょうど東京と北極圏の中間に位置するロンドンではそのくらいになるのだろう。

小松義夫写真・文『世界のともだち セネガル 貝がら島のマドレーヌ』(偕成社 2015)を眺める。
セネガルの首都ダカールから約110キロ下った貝がらでできた島で暮らす家族の日常が収められている。セネガルは他民族・多言語国家であるが、国内の世情は安定しており、人口の9割を超えるイスラム教とキリスト教のお墓が同じ場所にあるという。セネガルの人々が神の木と崇めるバオバブの木の力であろうか。
ダカール沖にあるゴレ島には、アフリカ各地から集められ奴隷としてアメリカ大陸に送られた「奴隷の館」があり、世界遺産(負の遺産)に登録されている。

 

百々新写真・文『世界のともだち ウズベキスタン シルクロードの少年サブラト』(偕成社 2016)を眺める。
中央アジアに位置するウズベキスタン(首都タシケント)の古都サマルカンドに住む少年の家族や学校、趣味が紹介されている。食事の写真が印象的であった。豚肉料理こそないが、プロフなどの遊牧民が食べてきた料理に加え、ロシアや中国、ペルシャなど様々な料理が食卓に並べられている。

ウズベキスタンはイスラム教徒が8割を占める国だが、女性は全く顔や頭を隠していない。人口は3000万人近くおり、中央アジアの約半数を占める。内陸国で塩湖のアラル海に面している。鉱物資源に恵まれ、金の埋蔵量は世界第4位、その他に石炭や天然ガス、原油、ウランなども取れる綿花の生産量は世界第6位で、ブドウやたばこの生産も多い。

『人と出会う場所 世界の市場』

小松義夫写真・文『人と出会う場所  世界の市場』(アリス館 2016)を眺める。
東ティモールの首都ディリの市場やミャンマーの湖の上の市場、アルバニアの山の広場の動物市馬など、辺境の地にありながらもカラフルな商品と笑顔が集う市場の写真集である。

特に、ブルキナファソの国境近くのつぼ市場が興味深かった。売られているのは水を溜め込む壺である。普通の素焼きの弥生式土器のような壺なのだが、浸み出した気化熱によって、水を冷たいまま保存することができる優れものである。また内陸国家であるため、塩が重要な交易品となっている。

また、ペルーの山の上の花市場の女性の写真も目を引いた。標高が高く日差しが強いので、山高帽が欠かせないという。

また、北アフリカの西沖合いにカーボベルデという島国があることを初めて知った。コーラのマークの付いた椅子に座って外食を楽しんでいる写真だったので、比較的財政は豊かなのだろうと推測される。