牧村僚『あこがれ微熱』(徳間文庫 2010)をパラパラと読む。
女子短大を舞台にした官能小説である。流れがあまりに性急で、濡れ場のシーンがなければ、自費出版小説レベルの内容である。
「読書」カテゴリーアーカイブ
『21世紀 地政学入門』
船橋洋一『21世紀 地政学入門』(文春新書 2014)を読む。
朝日新聞で北京特派員やアメリカ総局長を歴任し、主筆まで務めた著者が、地理や気候、農産物、鉱物、宗教、人口などの要素で不可避的に決定される国際政治について語る。特に中国と米国、日本の3ヵ国の政治について、隣国との関係や経済提携といった点から分析を加える。
『世界史の極意』
佐藤優『世界史の極意』(NHK出版新書 2015)を読む。
世界史の教材研究として手に取ってみた。繰り返される戦争を防ぐために、世界史をアナロジカルに学ぶことが大切だと述べる。特に近代に入って資本主義の発達とナショナリズム(国民国家)の形成、そして苛烈な競争社会からのアンチとしての宗教という3つのファクターで世界史を分析する。
印象に残った点を書き置いておきたい。大航海時代以降の商業の発展を取り込んだ帝国主義は、その正統性を喧伝するために、歴史や民族、宗教を利用する。そうした過程全般がナショナリズムである。
エトニとは何か。
アントニー・D・スミスの定義は〈エトニとは、共通の祖先・歴史・文化をもち、ある特定の領域との結びつきをもち、内部での連帯感をもつ、名前をもった人間集団である〉
(中略)たとえば日本の場合でも、日本的なエトニというのは、本居宣長によって「漢意(からごころ)に非ざるもの」という形で、『源氏物語』や平安時代のなかにあると読み込まれました。
しかし、平安時代の人々に、本居宣長が言ったような「漢意に非らざるもの」という意識があったかどうかはわかりません。おそらくなかったでしょう。
それでも、この本居宣長の読み込みは、明治期以降に読み直され、日本的エトニとして発見されていくわけです。
つまり、エトニがあるからネイションができるのではなく、ネイションができるからエトニが発見されるのです。
『キレる女 懲りない男』
黒川伊保子『キレる女 懲りない男:男と女の脳科学』(ちくま新書 2012)を読む。
何気に読み始めたら止まらなくなり、一気に読み終えた。著者は脳科学の研究者ではない。人口知能のエンジニアを経て、マーケティングにおける感性分析を専門とする会社を立ち上げている。公式プロフィールによると、大塚製薬の「SoyJoy」のネーミングなども手掛けている。
女性は右脳と左脳を結ぶ脳梁が太く、気持ちを言葉に託す能力に長け、ちょっとした色の違いや言葉の変化に敏感で、過去の記憶と結びつけて、経験的に大胆に行動することができる。一方男性は右脳と左脳を結ぶ脳梁が細いため、右脳と左脳のそれぞれの情報を統合する空間認知能力に優れ、自分のことよりも、遠くにあるものや動くものに関心が向きやすい。
女性が書いたものなので、男性に厳しい内容となっているが、女性の取り扱い方には大変「共感」した。女性の面倒臭さに改めて戸惑いを感じた。
以下、「女性脳トリセツ」より
- とにかく、話を聞く
→女性の話の腰を折らないことが、好感度をあげるコツ - とにかく、傍に置く
→女性脳は、大切な対象に意識を寄せて、ささやかな変化も見逃さず、意図を察して生きている - 言ってくれればやったのに、は禁句
→女性脳は「察してナンボ」なので、女性の怒りを買ってしまう - 過去の浮気は告白してはいけない
→女性脳は過去の感覚を臨場感たっぷりに想起するので、過去の話だと片付けられない - 過去を蒸し返されたら、優しくあやまる
→女性脳は過去に拘らないので、過去を蒸し返すということは現在のことを意識しているということ - 女性がキレたら、理由を追求せず、ただ真摯にあやまる
→女性の応えようのない質問に対しては、決して理詰めで答えようとしないこと - 応えようのない質問に善処する
→とにかく「悲しいね」「大変だね」と共感すること - 言葉の反復と、体験返し
→とにかく、女性の話を繰り返し、共感すること
また、女性は過去の経験の一部でも否定されると、全否定を捉えるので、「○○はダメだったけど、□□は良かった」という表現も禁句 - 結果よかったことについて、過去の失敗を指摘しない
→男性脳は「結果がよければ、途中の失敗を叱られても嬉しい」と感じるが、女性脳は「結果がよければ、プロセスで手にした経験も正しいと信じたい」と考える - 過去をねぎらう
→過去(プロセス)にこだわる女性は、過去をねぎらうことで快感度が高まる - 言葉のダイヤモンドをあげる
→女性脳は過去を反復するので、たったひと言の褒め言葉も反復して味わってくれる - 過去をねぎらう(営業編)
→過去を否定せず、「頑張ったね」と過去をねぎらう言葉をいつもかけること - そろそろ、きみの○○が食べたい、と言える男子になる
→女性脳は「少し先の楽しみ」に照らされて生きていくので、来週や来月の楽しい予定を伝えていくこと - あなたのお薦めは? に即答する
→女性は大切に思う対象に対しては、比較・検討よりも、「これしかない 一押し」を好む - 職場の涙は、見て見ないふりをする
女性脳の涙は悲しみではなく、脳をパニックから守る生理現象で、汗と一緒である
『インド三国志』
陳舜臣『インド三国志』(講談社文庫 1998)を読む。
1984年に刊行された本の文庫化である。
世界遺産で有名なタージ・マハルの建造者として有名なシャー・ジャハーンムガル帝国第5代皇帝の子のアウラングゼーブ帝の治世を中心に、ヒンドゥー教のマラーター勢力や、イスラム教シーア派諸国、欧州諸国との対立を描く。陳舜臣氏の言葉を借りれば、熱心なイスラム教スンニ派の信徒であったアウラングゼーブ帝が、宗教に不寛容な政策を取ったことが、ムガル帝国の滅亡のきっかけとなった。インドの国内の対立に乗じて進出したイギリスや、オランダ、フランスの動きも興味深かった。プラッシーの戦いやセポイの乱など、世界史の復習にもなった。敵の敵は見方という国際政治のルールが随所で垣間見えた。
