読書」カテゴリーアーカイブ

『たりないピース』

宮崎あおい&宮崎将『たりないピース:The Search For Earth’s Missing Peace』をパラパラと眺める。
「2025プロジェクト」という世界の貧困などに取り組むNPOやNGOなどを支援するプロジェクトの宣伝本的な意味合いの紀行写真集である。女優の宮崎あおいさんが兄と一緒に、インドの貧困地区を回り、カースト制度やフェアトレード、障害を負った子どもの境遇について素直に感じたことを綴っている。

企画の母体である「2025プロジェクト」について、ネットで調べてみたが、すでに解散したようで、ほとんど情報は残っていなかった。窺い知るところ、文科省の予算を電通が上手く使ったようで、芸能事務所などとタイアップして、日本の若者と世界の貧困問題を結びつけるイベントとして程よくまとめたようだ。

果たして税金を投入してどれほどの効果が上がったのだろうか。啓蒙という数値化できないものなので、その是非の判断は難しい。しかし、宮崎あおいさんの純真爛漫な笑顔と対照的に、胡散臭い大人の都合が垣間見える内容であった。

『ブリューゲル・さかさまの世界』

カシュ・ヤーノシュ編『ブリューゲル・さかさまの世界』(大月書店 1988)をパラパラと読む。
16世紀のオランダの画家ピーター・ブリューゲルの3枚の作品について、詳細な解説が加えられている。「子どもの遊び」「ネーデルランドのことわざ」と下記の「バベルの塔」の3作品が取り上げられている。絵の解題というつまらない内容で、全く頭に入ってこなかった。

『花田編集長! 質問です。』

花田紀凱『花田編集長! 質問です。:出版という仕事で生きる』(ユーリード出版 2004)をパラパラと読む。
雑誌『編集会議』(宣伝会議刊)に連載されていた「花田編集長の編集なんでもQ&A」コーナーの内容をまとめたものである。出版業界を目指す学生や実際出版業界に身を置く編集者の悩みにズバリと答える。朝日新聞が嫌いな理由もズバリ「きれい事に終始しているところがイヤ」と回答を寄せている。
雑誌の連載コーナーなので、わざわざ単行本にする必要があったのだろうか。出版業界を目指す学生以外、読む価値はない。

『20』

窪塚洋介『20』(光進社 2000)をパラパラと眺める。
芸能人の窪塚洋介の二十歳を記念した写真集(ポエム集?)である。自分は周りとは違うという自意識が多分に露出された文で埋め尽くされている。著者自身に興味がなかったので、1分ほどで読み流した。

『地図を破って行ってやれ!』

石田ゆうすけ『地図を破って行ってやれ!:自転車で、食って笑って、涙する旅』(幻冬舎文庫 2016)を読む。

2013年に刊行された本の文庫化である。著者の石田氏は学生時代に自転車で日本一周、そして大学卒業後に自転車で世界一周を果たしている、生粋の自転車旅行家である。その著者が、3、4日かけて日本のあちこちを自転車で気軽に旅するという企画である。冒険というよりも、エッセー仕立てであり、ビールと地図を片手に、ふんふんと読んだ。

印象に残った点を2ヶ所書き留めておきたい。前半は熊本県阿蘇の旅行記の一節である。私も自転車旅行ならではの「地球」を新鮮に感じる旅を重ねていきたい。後半は本書でも随所に登場する友人との再会について述べた一節である。論語の「朋有り遠方より来る、亦た楽しからずや」を思い出した。ちょうど新型コロナウイルスの外出自粛の影響で、ずっと家にいる自分にじっくりと語りかけてくるような内容だった。ツールや同行者を問わず、旅を大事にしたい。

そうしてくだんの白川水源に着くと、「こりゃたしかにすげえわ」と目を丸くした。
木立の中に澄みきった泉があった。新しい水槽のように水の中がはっきりと見える。底は砂地で、ジオラマや森のような藻が繁茂している。そこに一ヶ所、砂が舞い、藻がたえまなく揺れているところがあった。水が猛烈に湧き出しているのだ。その水は大きな清流となって、下流へ囂々と音を立てて流れている。湧き出す水の量はなんと毎分60トン。大地から水が生まれている。そのことがはっきりと目に見える。地球-この言葉を、阿蘇に来て何度頭に浮かべただろう。

-旅のおもしろさが最も極まるのは、人と再会するときじゃないだろうか……。
旅に出なければ会うはずのなかった人に会い、別れてからはそれぞれの道を歩む。そしてときを経て再会する。その懐かしい顔を見たとたん、前回会ったときから現在まで続いている長大な時間を感じ、人生を俯瞰しているような気分になる。
この22年間は本当にあっという間だった。大学を出て、サラリーマンになり、世界をまわって、文章を書くようになった。さまざまな出来事と感情が駆け足で流れていった。そのあいだ、(旅先で再開した)お父さんはラーメンを作り続け、3人の子が結婚し、7人のお孫さんを持った。そんな互いのドラマが、二本の放物線が交わるように、ある一点で再び交差する、お互いの目尻には笑いじわが増えている。人生というのは、なんてユニークなんだ。体の奥から力があふれてくる。