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『スケッチ 全国町並み見学』

片寄俊秀文・絵『スケッチ 全国町並み見学』(岩波ジュニア新書 1989)をパラパラと読んでみた。
著者は、日本初の大規模ニュータウンである千里ニュータウンの設計者であり、長崎総合科学大学教授時代には、閉山直前の軍艦島の人たちの暮らしを調査した研究者である。その著者が、全国に点在する明治・大正時代の建物や景観を、手書きのスケッチと合わせて紹介する。

柳川や倉敷、川越などの定番どころだけでなく、美々津や足助、安中などのあまり有名ではないが歴史ある町も紹介されている。また、すでに消えてしまった佃島の路地や代官山の同潤会アパートなどの風景にも触れている。

『蒸気機関車』

万有ガイドシリーズ『蒸気機関車:日本編』(小学館 1981)をパラパラと読む。
明治維新から第二次世界大戦まで、日本の貨物と旅客輸送の根幹を担った160余の蒸気機関車が丁寧に解説されている事典である。1871年製造の日本初の第1号機関車の150型に始まり、1948年製造C62型で新規設計機関車は幕を閉じる。それ以降、車両の改造が行われるが、それも1959年のD61型で終わりを告げる。

石炭火力を用いてシリンダー内のピストンを動かし、それによって生じた反復エネルギーを歯車の組み合わせで車輪の回転まで伝えていくという、武骨な構造を持つ乗り物なので、外観もゴツい。ただし、冷却のためかシリンダーのパイプが表に出ており、蒸気の流れなどを想像することができるので楽しい。

『たけしのグレートジャーニー』

ビートたけし『たけしのグレートジャーニー』(新潮社 2014)を読む。
2008年から2013にかけて雑誌「新潮45」に掲載された11人の学者との対談がまとめられている。冒頭は、アフリカで誕生した人類が南米のチリまで旅立っていった「グレートジャーニー」5万キロの行程を、10年弱の期間を使って自らの腕力と脚力と自分で操れる動物の力だけで遡行した冒険家の関野吉晴氏との対談である。ベーリング海峡を渡る際に風速5メートルから10メートルの偏西風に悩まされたため、「逆ルートは無理があります。やっぱり人類は逆ルートでは移動しないことが、やってみると分かります」とこぼしている。

その他、文化人類学者の西野雅之氏、植物探検家の荻巣樹德氏、ゴリラ研究家の山極寿一氏、シロアリ研究家の松浦健二氏、ウナギ研究家の塚本勝巳氏、辺境生物学者の長沼毅氏、海洋動物学者の佐藤克文氏、ダイオウイカ学者の窪寺恒己氏、奇抜なファッションを纏う火山学者の鎌田浩毅氏、宇宙物理学者の村山斉氏との対談が収められている。変人は東大と京大に多いということが分かる。鎌田氏の著作にはこれからじっくりと向き合っていきたい。

『エベレスト・ママさん』

田部井淳子『エベレスト・ママさん:山登り半生記』(山と渓谷社 2000)を読む。
1976年2月から11月まで雑誌『山と渓谷』に連載されたものである。著者の田部井さんは、1975年5月に女性で世界初の世界最高峰エベレスト8,848m(ネパール名:サガルマータ、チベット名:チョモランマ)登頂に成功した人で、その後1992年には、女性で世界初の七大陸最高峰登頂者となっている。

本書は登山途中の苦労だけでなく、仲間同士のギクシャクした関係や結婚・出産にまつわる悩みも赤裸々に綴られている。現在のようにzoomなどのネット会議での根回しもできないので、話一つ進めるにしても意見の対立や人間関係の亀裂を生み出してしまう。物事を進める側の苛立ちがはっきりと書かれていて興味を引いた。

『水車の四季』

文・室田武、写真・河野裕昭『水車の四季』(日本評論社 1983)をパラパラと読む。
刊行当時ですら、日本の風景から消えかけていた全国各地の水車の写真と解説である。解説を担当した室田氏は、京都大学理学部物理学科を卒業した変わり種の経済学者で、水車の仕事量の計算に着目している。水車の機能は様々で、ハブが回転する力を利用した製粉や稲の脱穀、籾摺りに活用されている。

後半は水車のエネルギーを活用した発電について詳細に説明している。日本独自の螺旋水車を活用した発電など、現在活用が進んでいる小水力発電とほぼ同じ議論が述べられている。著者の視点の鋭さに驚かされる。