読書」カテゴリーアーカイブ

『東孝の遺言』

東孝『東孝の遺言』(ベースボールマガジン社 2021)をパラパラと読む。
大道塾を立ち上げた著者が癌に罹り、自身の来し方と、大道塾の団体や空道の総合格闘技スタイルの行く末を語る。薄いグローブで寝技からも殴りあう現在の格闘技の隆盛に疑問を呈し、素手とスーパーセーフ、寝技からの打撃を禁じた著者の実戦性と安全性を確保した上での人間教育という道は揺るぎないものである。

『東北歴史紀行』

高橋富雄『東北歴史紀行』(岩波ジュニア新書 1985)をパラパラと読む。
著者は岩手県生まれで、東北帝国大学を卒業し、旧制第2高等学校講師を経て東北大学教授を定年まで務めた生粋の東北人である。
『奥の細道』の芭蕉の足跡を辿るという形を取りながら、東北各地の旧跡が丁寧に紹介されている。とりわけ奥州藤原氏が栄華を誇った平泉について造詣が深い。平泉は仙台の多賀城や福島の白川関、青森の外ヶ浜のちょうど真ん中にあって、東北地方全域を治めやすい位置にある。また四神相応といって、東に青龍(大河)が流れ、西に白虎(大道)、南に朱雀(沼沢湿地)、北に玄武(山)を背負っており、奈良や京都と全く同じ地形を有している。

『「信濃の国」殺人事件』

内田康夫『「信濃の国」殺人事件』(光文社文庫 2011)を読む。
1985年に刊行された本で、何度か文庫化された本である。著者の初期の作品で、信濃のコロンボこと竹村警部が登場する本格ミステリーである。長野県内の地名が何度も出てくるので、地図帳で位置を確認した。

『7つの大地震』

守屋喜久夫『7つの大地震:現地レポート』(新潮社 1982)をパラパラと読む。
1978年のイラン・タバス地震に始まり、1980年のアルジェリア・エルアスナム地震、同年のイタリア南部地震、1979年のユーゴスラビア地震のほか、イタリア・フリウリ地震、ルーマニアやトルコの地震が取り上げられている。

この手の地震の本は参考文献の切り貼りですぐに飽きてしまうのだが、本書は実際に混乱している国に著者自身が入国し、ビザの取得や交通の混乱など、震災の現場まで辿り着くまでのドタバタも描かれている。著者は学生時代に日本大学を代表し箱根駅伝にも3度出場している経歴の持ち主で、仕事というよりも好奇心に突き動かされて、次から次へと地震現場を駆け回っている。

7つの大地震全てが、中東から地中海沿岸にかけての”新期造山帯≒狭まるプレート境界”で発生しており、アフリカプレートやアラビアプレートが、ユーラシアプレートやエーゲ海・アナトリアプレート、イランプレートとおしくらまんじゅう状態になっている様子に想像がおよぶ。

『日本の国境』

山田吉彦『日本の国境』(新潮新書 2005)を読む。
著者は日本財団に勤務しており、実際に沖ノ鳥島や大東諸島など、国境に近い島を訪れている。知識ばかりに流れがちな本が多い中で、そうした体験談は面白かった。

日本は、東は南鳥島から西は与那国島まで3143キロメートル。北は択捉島から南は沖ノ鳥島まで3020キロメートル。同じ国内でありながら、南北間の冬季における平均気温差は、摂氏30度にもなり、亜寒帯から熱帯まで、幅広い気候区分を持っている。同じ季節に氷の妖精クリオネが舞う流氷の海と、色鮮やかなチョウチョウウオやクマノミが泳ぐサンゴ礁の海を見ることができる、多くの生態系をもった自然豊かな国なのである。

但し、沖ノ鳥島は以前は北露岩、東露岩と呼ばれていたもので、高潮時には、北小島は16センチ、東小島は6センチだけ水面上に頭を出すとても小さな島である。

また、日本近海の大陸棚にはマンガン団塊やメタンハイドレート、コバルト・リッチ・クラストなどの海底資源が埋蔵されており、メタンハイドレートについては、日本の天然ガス消費量jの100年分のメタンがあるといわれている。但し、ある地質学者は「おそらく大陸棚には10兆円相当の資源があるだろう。しかし、今の技術で、それを掘るには10兆円以上のかかるんじゃないかな」と話している。