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「最低法人税15%合意へ」

本日の東京新聞朝刊に、20カ国・地域財務相・中央銀行総裁会議で、各国共通で法人税率の最低基準の導入で合意の見通しが立ち、巨大IT企業の税逃れを防ぐ「デジタル課税」の導入でも一致したとの内容である。記事では詳細な中身が見えてこないが、一部の多国籍企業が世界中の富の大半を独占する構造にメスが入るのならば歓迎すべき話題である。

1学期の授業の中で、「輸出加工区」という用語を学習した。主に発展途上国に設置され、多国籍企業の誘致の下で輸出向けの生産が行われる自由貿易区である。対外取引に便利な国際港の隣接地などに工業団地が造成され、関税や法人税の減免、外資比率の規制緩和、利潤 ・ 配当の本国送金の自由化などの優遇措置が採られる。1959年にアイルランドのシャノン空港で第1号が開設され、その後、アジア諸国を中心に多くの発展途上国に普及し、現在の設置国は90カ国にのぼる。こうした輸出加工区の税負担の軽さが多国籍企業の旨味ともなっている。1960年代、70年代の工業化の進展には大きく貢献したが、法人税の低い国へ工場がどんどん移転することになり、「産業の空洞化」の一因ともなっている。

また、GAFAと称される巨大IT企業の法人税逃れは、ここ10数年疑問視されていたことである。みなさんもネットで毎日のようにYoutubeの動画広告やインターネットサイトのネット広告を目にしているが、それらを扱うグーグル社の日本法人の法人税は税率の低いシンガポール政府に支払われており、日本人が間接的に支払って広告料からの法人税は日本政府に還元されない。また、グーグル社だけでなくアップル社の法人も、そもそも法人税がない「タックス・ヘイブン」の(天国[heaven]ではなく、回避地[haven])英領バミューダ登記されている。おかしな話である。そもそも国境がないデジタル企業に対し、ようやく法律が追いついた形である。

フランスの経済学者トマス・ピケティ氏も著書『21世紀の資本論』(私は読んでいないが…)の中で、あらゆる資本に対して累進的な税を課すべきだと述べる。固定資産税の仕組みを拡張し、株や普通預金などのあらゆる資本に課税の枠を広げ、さらに国際的な資金移動を透明化し、tax havenの規制を含めた「グローバル累進資本税」を提案している。米国と欧州の関係改善も背景にあるが、これからの議論の進展に期待したい。

「ストレス少ない アニマルウェルフェア」

本日の東京新聞朝刊に、採卵鶏の飼育環境に関する記事が掲載されていた。
卵は傷みやすいという性格上、ほぼ自給率100%となっている。茨城県や千葉県、鹿児島県が上位にランキングされるが、その3県を合わせても20%をわずかに超える程度で、気候や地形も関係ないので全国で生産されている。
ただし、採卵鶏の飼養戸数は年々減少しており、最新の農林水産省の統計によると全国で1880戸となっている。直近の5年間で500戸も減っている。一方で1戸あたりの飼養羽数は増加しており、1戸当たり成鶏めす飼養羽数は7万4,800羽となっている。

日本の産む鶏の飼育環境は、記事にあるような動物福祉とは逆の方向に進んでいる。畜産農家そのものが大きく減少していく中で、動物福祉の拡充は難しいと言わざるを得ない。人間だって狭苦しいケージに嵌った生き方しかできない日本で、のびのびとした農場飼育の普及は難しいであろう。

「タリバン攻勢 国境警備崩壊か」

本日の東京新聞朝刊に、アフガニスタン情勢が詳しく報じられていた。
地図にアフガニスタンの地図が載っているが、少し見にくいので補足しておきたい。アフガニスタンに南東はパキスタン、南西にはイランがある。また、1990年以前は、アフガニスタンから北にあるウズベキスタン、カザフスタン、タジキスタン、キルギスといった中央アジアの国々はロシアを盟主とするソビエト連邦の国であった。1979年にソ連がアフガニスタンに侵攻したと記事にもあるが、社会主義国のソ連や中国と敵対する、資本主義国のイラン、パキスタン、インドに挟まれた国がアフガニスタンであった。パキスタンもインドもイギリスの植民地であったというのは地理Aの授業でも触れたところである。

1978年までは、アフガニスタンに隣接したイランとアメリカは昵懇な関係だったのだが、1979年に反米・イスラム回帰のイラン革命が起こると、イランとアメリカの関係は決裂してしまう。その機を狙ってソ連がアフガニスタンに攻め入ったのが、10年近く泥沼化することになったアフガン侵攻である。米国がアフガニスタンの部族に武器を供給し、ソ連への攻勢に大きく加担した。シルベスタ・スタローンが主演を務めた映画『ランボー3/怒りのアフガン』(1988 米)は、正義のアメリカが現地のゲリラ部隊と手を取り合って、悪のソ連を迎え撃つという構図で描かれる。

しかし、2001年9月のアメリカ同時多発テロの首謀者とされるアルカ・イーダのオサマ・ビンラディンを支援したのが、かつて米国自身が資金や武器を供与したゲリラ部隊の一つであるタリバンであった。翌月10月以降、米国は一大攻勢に出て、アルカ・イーダをほぼ絶滅に追い込んだ。しかし、その後、紆余曲折がありながら、反政府武装勢力のタリバンが勢力を回復しているとのことである。これまでアフガニスタンを押さえつけていた米国が撤退する前で、既にこの状況なので、米軍が完全に撤退する今年の9月以降はどうなってしまうのであろうか。

「ハイチ大統領暗殺」

本日の東京新聞朝刊に、中米のハイチ大統領の暗殺記事が掲載されていた。
世界史の教科書には、フランス革命の
ハイチというと一人あたりのGNIが790米ドルと、中米最貧国となっている。衣類やカカオ、マンゴーなど、輸出が10億7,800万米ドルの一方で、輸入は食料品や機械など48億2,200万米ドルの赤字体質となっている。

「独 難民へワクチン着々」

本日の東京新聞朝刊より。
ドイツは人口が8300万人おり、その約2%にあたる190万人を難民として受け入れている。UNHCRの資料によると、ドイツはシリア、イラク、アフガニスタン、エリトリア、イラン、トルコ、ソマリア、セルビア、コソボ、ロシア、パキスタンの国々から難民を受け入れており、欧州では断トツで多い。国境を接するからの避難民を受け入れている国はトルコやパキスタン、レバノン、ウガンダなど数多くあるが、遠方の国から政府の予算を用いて難民を支援する国は、他にフランスとアメリカを数えるだけである。

記事は ちょっと美談調で、国内の難民受け入れへの反発や、これまでのメルケル首相の政策への支持の低下などにふれられていない。ただ、記事の最後の「ドイツは身一つで来た人たちにワクチンを提供してくれる。彼らが社会の一員として受け入れられた気がする」と述べるスタッフの言葉は重い。日本に暮らす皆さんはどう考えますか。