地理」カテゴリーアーカイブ

「難民押し寄せ EU緊迫」

本日の東京新聞朝刊に、旧ソ連のベラルーシ国境に中東から約3000人の難民が押し寄せ、EU加盟国のポーランドに侵入しようと国境付近でのせめぎ合いが生じているとの記事が掲載されていた。
先月の授業でもとり上げたが、トルコとギリシアの国境付近での衝突とよく似た話である。EU加盟国は「シェンゲン圏(The Schengen Area)」という領域を形成し、EU域内では、EU市民であるかEU域外国の人であるかにかかわらず、旅券(パスポート)検査などの出入国審査(域内国境管理)が廃止される協定が結ばれている。もちろん自由にEUに入ることはできないが、一度入ってしまえば、さまざま制限はあるが工場や農場で働き、生活することができる。ましてやポーランドはドイツに近いため、ギリシア以上に難民にとっては好都合である。

それにしても奇妙な話である。なぜ、急にイラク難民が言語も宗教も気候も異なるベラルーシにやってきたのであろうか。記事にもある通り、独裁体制を敷いて長期に政権の座に居座るルカシェンコ大統領の影がちらつく。ルカシェンコ大統領とロシアのプーチン大統領が密約してEUを困らせるような対応をしているのであれば、難民を政治利用した許せない行為である。

「燃料高騰追い風 ロシア輸出攻勢」

本日の東京新聞夕刊より。
世界的に脱化石燃料の風潮が強まり、値段が高騰する中、天然ガス、原油、石炭とも輸出量で世界第3位に入るロシアが積極的な資源外交を展開しているという内容だ。経済封鎖の真っ只中にある北朝鮮を巻き込んだ石炭輸出ルートや、親ロ色が強いハンガリーとの長期にわたる天然ガスの供給計画、トルコを経由した天然ガスパイプラインの建設、インドへのコークス炭の輸出など、授業の教材研究にぴったりの内容であった。ロシアのところで、プーチン政権の推し進める資源外交について触れたい。

「中央アジア3ヵ国 タリバン政権への対応 温度差」

本日の東京新聞朝刊に、久しぶりにトルクメニスタンに関する記事が掲載されていた。トルクメニスタンは1991年に旧ソ連から独立して以来、ニヤゾフとベルディムハメドフの2人しか大統領になっていない、極めて独裁色の濃い国である。1995年に国連から「永世中立国」に認定され、隣国とも政治的関係を絶っている国である。埋蔵量世界第4位の豊富な天然ガスを有し、大規模な灌漑による綿花栽培と合わせて、着実な経済成長を実現している国でもある。地獄の門とも呼ばれる、24時間365日燃え続ける天然ガス田のダルヴァザ・ガス・クレータが有名である。授業中に動画を紹介したクラスもある。

そんなトルクメニスタンは内陸国であるため、天然ガスを輸出するにはパイプラインを敷設するしかない。しかし、北はカザフスタンやウズベキスタン、南はイラン、カスピ海を超えた西岸はアゼルバイジャンと資源国に囲まれている。そのため、どことも同盟関係を組んでいないトルクメニスタンとしては、アフガニスタン、そして人口が多いパキスタンやインドまでパイプラインを通したい思惑が強い。アフガニスタンのタリバン政権はここしばらく安泰であろう。

「北京 大気汚染深刻」

本日の東京新聞朝刊に、北京市内でPM2.5による深刻な大気汚染の模様が報じられていた。
PMとは「Particulate Matter(粒子状物質)」の頭文字をとったもので、工場や自動車、船舶、航空機などから排出されたばい煙や粉じん、窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)などの大気汚染の原因となる粒子状の物質のことである。2.5とは直径2.5μm(1μm(マイクロメートル)=1mmの1000分の1)を指し、髪の毛の太さの30分の1の大きさ以下の非常に小さな粒子のことである。

昨日も書いたが、中国は無尽蔵といって良いほど石炭が産出されるので、石炭の燃焼の際に生じる有害物質が大気中で光やオゾンと反応し、PM2.5が生成される。PM2.5は、粒子の大きさが非常に小さいため、肺の奥深くにまで入り込みやすく、ぜんそくや気管支炎などの呼吸器系疾患や循環器系疾患などのリスクを上昇させるものである。

記事には触れられていないが、こうした大気汚染は国境などなく、隣国の平壌やソウルでも深刻な被害をもたらしている。古い工場や発電所で石炭を燃やすために、有害物質が垂れ流しとなってしまう。

「地熱発電10年で4倍」

本日の東京新聞夕刊に、日本の地熱発電所が東日本大震災以降4倍に増えたとの記事が掲載されていた。
授業の復習になるが、地熱発電は字の通り、地中の高温の熱気でタービンを回して発電する仕組みである。そして、地中に熱が発生するためには膨大な圧力が必要である。そのため地熱発電は、プレートが動く境目にあたる新期造山帯でしか稼働することができない。地熱発電の割合が多い国を挙げてみると、アイスランド(27%)、フィリピン(15%)、ニュージーランド(14%)となっている。アイスランドはギャオと呼ばれる海嶺が地表に顔を出した島であり、豊富な地熱エネルギーを有した国である。また、アルプス=ヒマラヤ造山帯にあるトルコも近年地熱発電の開発が著しい。

日本も4枚のプレートがぶつかる火山・地震大国であり、地熱発電にうってつけの場所に位置する。中学校の日本地理にも登場する、日本最大の地熱発電所である大分の八丁原発電所は、約37000戸の家庭の電力量に相当する11万kWの電力を生み出している。小規模発電所が多いとのことだが、建設コストも高いので、地道にコツコツと増設を目指したい。

ではいったい、なぜこれほど鼻息高く語るのかと言えば、実は10年ほど前に、秋田大学理工学部の通信教育で地質エネルギーに関する講座を受講したからだ。秋田大学には国産資源学部があり、石油や天然ガス、レアメタルなどの地質工学の分野では、旧帝大に見劣りしないほどの研究が行われている。
私も関心は高かったのだが、テキストがあまりに訳分からず、大きい声では言えないが、受講はしたもののレポート提出には至らず、満期除籍となってしまった。地球科学を勉強するには、最低限高校レベルの微積分の知識が必要だと反省した次第である。

来年度数Ⅲを選択する生徒は是非、地質科学の分野も将来の選択肢に入れてほしい。