地理」カテゴリーアーカイブ

「イラン 中国に急接近」

本日の東京新聞朝刊に,米国から原油輸出規制をかけられているイランと,イランの最大の貿易国である中国が急接近しているとの記事が掲載されていた。中国は自国が主導する上海協力機構へのイランの正式加盟も歓迎する考えとのこと。

地理的空間や条件から民族や国家の特質を説明しようという学問を地政学という。地理Bの教科書に書かれている内容だけでも,地政学の観点から世界政治を俯瞰することができる。まず原油の多くは中生代以降のプレートの変動による新期造山帯の褶曲地層から産出される。そのため,環太平洋造山帯とアルプス=ヒマラヤ造山帯の周囲に原油産出が集中している。

1960年の設立当初の石油輸出国機構(OPEC)の加盟国を見ても,サウジアラビア、イラン、イラク、UAE、クウェート、カタール、アルジェリア、ナイジェリア、リビア、インドネシア、ベネズエラと上記の2つの新期造山帯に集中していることが分かる。

米国の産油が

 

「トルコにロシア製ミサイル」

今頃,3年生は模試の真っ只中でしょうか。判定も参考にしていく時期になりましたので,最後まで取り組んでください。また,昨日は雨の中,試合に応援にお疲れさまでした。

本日の東京新聞朝刊に,トルコにロシア製の地対空ミサイルシステムが配備されるとの記事が掲載されていた。国際政治の難しさを改めて感じる記事であった。ロシアとトルコは現在国境こそ接していないが,黒海を挟んだ隣国同士である。世界史で習う内容だが,トルコとロシアはオスマン・トルコ時代を含め,500年近く激しい戦闘を繰り返してきたことで知られる。1853年に始まるクリミア戦争では,英国の看護士のナイチンゲールが活躍している。

そのトルコは第2次大戦後,イスラム教国でありながら,1949年に発足した北大西洋条約機構(NATO)に加盟している。中東や北アフリカの共産主義国化を防ぐ資本主義陣営の防波堤として役割である。その後,1955年にはトルコ南部に米軍のインジルリク空軍基地が整備されている。冷戦を表す「鉄のカーテン」が黒海を越えて,トルコとジョージア・アルメニア・アゼルバイジャンとの間にも敷かれたわけである。時代はかなり飛んでしまうが,2015年にはトルコ軍によるロシア戦闘機撃墜事件まで起きている。

そのトルコとロシアが接近するという。米国トランプ大統領からの圧力が原因であろうか。しかし,トルコは原油や天然ガスなどの資源の産出が少なく,EU向けの繊維や機械工業製品輸出が国の経済を支えており,米国との貿易額は輸出入とも少ない。むしろ米国が注視しているのが,中東やロシア,中央アジア,EUを結ぶトルコの占める地理的位置であろう。

改めてトルコの地図を見ると,トルコは東から時計回りにギリシャ,ブルガリア,黒海を挟んでルーマニア,ウクライナ,ロシア,ジョージア,アルメニア,イラン,イラク,シリア,キプロスと国境を接している。中国が提唱する一帯一路構想の要衝にあるということが分かる。米中露の3国が思惑が交差する「文明の十字路」という位置づけは変わらないようだ。

「独政治家殺害 極右の影」

本日の東京新聞夕刊に,難民受け入れを積極的に進めてきたメルケル首相の与党CDUに所属する地方政治家が,反難民移民を掲げる極右組織で活動していた男に殺害されたとの記事が掲載されていた。他にも難民受け入れ関わる政治家への脅迫もあり,ドイツ国内で公人を標的とした刑事事件のうち約4割が右翼的な動機によるものだという。

難民・移民の問題は,シリア内戦が落ち着いた後も増加することは間違いない。肝心なことは,難民・移民の理由や出身国の如何ではなく,その国の政治や行政,司法,社会,教育における異文化理解の寛容さである。机上の異文化理解や試験・出世のための国際コミュニケーション力ではない。日常生活のなかで自分の価値判断にこだわったりおしつけたりせず,多様な考えや価値観と共存していくバランス感覚が大切である。

だからこそ,学校生活の中で自分の個性をしっかりと磨く努力と,他人の意見や考えをじっくり聞く(鵜呑みするのではない)ことができる我慢強さの両面を涵養していかなくてはならない。移民・難民問題を第一義的に捉えるべきは学校である。

話は変わりますが,期末考査でドイツの位置関係を尋ねる出題をしました。ドイツはヨーロッパの中心にあり,9つの国と国境を接します。9つすべて挙げることができますか。

「英 イランタンカー拿捕」

本日の東京新聞夕刊を何気に読んでいると,珍しい国の名前が目に飛び込んできた。
ぬあんと,「イギリス領ジブラルタル」とある。記事によるとイベリア半島南端に位置する英領ジブラルタル自治政府が,イランから遠くアフリカ南端の喜望峰を回ってシリアに原油を輸送しようとしたタンカーと拿捕したとのことである。

なぜイベリア半島の南端にイギリス領があるのかというと,世界史受験者におなじみのスペイン継承戦争の講和で結ばれたユトレヒト条約に基づくからである。1713年にスペインからイギリスに割譲されて300年以上経つのだが,あまりに小さく軍事基地の拠点以上の意味合いが無いので,日本ではあまりその存在を認知されていない。面積は6.8平方キロメートルで,東京の狛江市とほぼ同じ大きさである。

話は変わるが,先日イランも加盟する石油輸出国機構(OPEC)の代表と,ロシアのプーチン大統領が共同歩調体制を取るとの報道があった。原油生産量で世界第1位の米国に対して,「敵の敵は味方」戦法である。節操ないと言ってしまえばそれまでだが,近い内にホルムズ海峡付近でなにやら一悶着ありそうである。

地理受験者向けに説明すると,英領ジブラルタルは陸繋島である。つまりは江ノ島や函館,紀伊半島の潮岬と同じく,もともと陸から離れていた島が砂州(トロンボ)によって結ばれて,半島のように海に突き出た形になったのである。
写真を見ると,函館山や江ノ島の”山”を彷彿とさせる。2年生の時の遠足で江ノ島に行った人は分かるでしょう。

ちなみに,陸から鳥のくちばしのように曲がった砂礫を砂嘴といい,そこから「進化」して長く伸びて他の陸地と繋がったのを砂州という。さらに付け加えると,砂州によって外海から隔てられた水深の浅い水域を潟湖(ラグーン)という。潟湖は河川の注入の影響で淡水化傾向にあり,多様な生態系を有することで知られる。