「トルコにロシア製ミサイル」

今頃,3年生は模試の真っ只中でしょうか。判定も参考にしていく時期になりましたので,最後まで取り組んでください。また,昨日は雨の中,試合に応援にお疲れさまでした。

本日の東京新聞朝刊に,トルコにロシア製の地対空ミサイルシステムが配備されるとの記事が掲載されていた。国際政治の難しさを改めて感じる記事であった。ロシアとトルコは現在国境こそ接していないが,黒海を挟んだ隣国同士である。世界史で習う内容だが,トルコとロシアはオスマン・トルコ時代を含め,500年近く激しい戦闘を繰り返してきたことで知られる。1853年に始まるクリミア戦争では,英国の看護士のナイチンゲールが活躍している。

そのトルコは第2次大戦後,イスラム教国でありながら,1949年に発足した北大西洋条約機構(NATO)に加盟している。中東や北アフリカの共産主義国化を防ぐ資本主義陣営の防波堤として役割である。その後,1955年にはトルコ南部に米軍のインジルリク空軍基地が整備されている。冷戦を表す「鉄のカーテン」が黒海を越えて,トルコとジョージア・アルメニア・アゼルバイジャンとの間にも敷かれたわけである。時代はかなり飛んでしまうが,2015年にはトルコ軍によるロシア戦闘機撃墜事件まで起きている。

そのトルコとロシアが接近するという。米国トランプ大統領からの圧力が原因であろうか。しかし,トルコは原油や天然ガスなどの資源の産出が少なく,EU向けの繊維や機械工業製品輸出が国の経済を支えており,米国との貿易額は輸出入とも少ない。むしろ米国が注視しているのが,中東やロシア,中央アジア,EUを結ぶトルコの占める地理的位置であろう。

改めてトルコの地図を見ると,トルコは東から時計回りにギリシャ,ブルガリア,黒海を挟んでルーマニア,ウクライナ,ロシア,ジョージア,アルメニア,イラン,イラク,シリア,キプロスと国境を接している。中国が提唱する一帯一路構想の要衝にあるということが分かる。米中露の3国が思惑が交差する「文明の十字路」という位置づけは変わらないようだ。