地理」カテゴリーアーカイブ

「人口流出2割 将来に影」

本日の東京新聞朝刊に、1989年の東欧革命から30年を迎えたルーマニアの現状が紹介されていた。
記事によると、チャウシェスク独裁政権が倒れた後も、共産主義時代の支配層が権力を握り続け、国内経済はずっと低飛空状態が続いているとのこと。1人あたりのGNIは9,970ドルで、EUで最下位のブルガリア(7,760ドル)に次いで低い。ちなみに同じ出典データで日本は同38,550ドルである。

EU域内では単一通貨ユーロやシェンゲン協定により、人や物、金の移動に制限がないため、域内で経済力の低い国から高い国への「移民」が止まらない。ルーマニアではここ30年で人口の2割が流出している。イギリスのブレグジットもそうした東欧や中東からの移民や難民に対する社会不安が根底にある。

記事の最後に「特に医師不足は深刻だ。持続性のある分野への投資を進めるなど、若者の流出を食い止める政策が必要だ」とあるが、日本の地方の過疎化と大変似通った課題が指摘されている。工業団地の誘致や田舎暮らしの宣伝、日本ではあまり評判が良く「ふるさと納税」など、日本の事例がEUでも役立つことがあるかもしれない。

「成田空港近く物流倉庫火災」

本日の東京新聞朝刊に、成田空港近くの倉庫内にあった自動車部品のゴムパッキンが火元と見られる火災が発生したとの記事が掲載されていた。

国土交通省港湾局がまとめた「港湾統計(年報)」(2017)によると、国内の港湾取扱貨物量1位は名古屋港の19,597万トン、2位は成田国際空港の15,329万トンとなっている。ちなみに、3位は11,350万トンの京浜工業地帯の横浜港、4位は10,937万トンの北海道・苫小牧港、5位は10,150万トンの北九州港となっている。

また、成田国際空港株式会社が発行する貨物輸送のパンフレットによると、輸出入の金額ベース(2017)では成田が日本一で、輸出が111,679億円、輸入が122,444億円の合計234,122億円である。2位の東京港が175,632億円、3位の名古屋港が166,078億円となっている。この逆転現象は成田が高額な半導体電子部品や通信機を扱っているからである。

パンフレットにも宣伝されているが、北関東を結ぶ圏央道が成田空港まで開通し、空港内外に多数の国際物流施設が展開・集積され、周辺に工業団地まで建設されている。東京都心から離れているので旅客のアクセスが悪く、国際空港としての役割も羽田に押され気味だが、その反面、広い敷地と北関東との地の利を生かした貨物輸送では十分に成功している。

旅客は羽田、貨物は成田といった安易な棲み分けは難しいであろうが、成田空港の重要性はますます高まっていくであろう。

「未発生都県に豚コレラワクチン」

本日の東京新聞朝刊に、茨城、栃木、千葉の地域で豚コレラワクチン接種を進めるとの記事が掲載されていた。埼玉東部地区の高校生にとって、豚は田舎で飼育されているもので、自分たちの生活圏の話とは思わないであろう。

しかし、国内の豚の飼育頭数は、農林水産省「畜産統計」(2018年)によれば、1位から3位こそ鹿児島、宮崎、北海道に譲るものの、4位に千葉県、5位に群馬県、6位に茨城県、8位に栃木県が食い込む。また、飼養戸数及び飼養頭数は減少傾向で推移しているものの、規模拡大等により1戸当たり飼養頭羽数は増加傾向で推移している。北関東に隣接する埼玉県は豚の飼育上位県に囲まれていると言っても良い。

但し、専門家によると、豚コレラに罹患した豚肉を食べても人間には影響しないとのこと。今後日米貿易協定により、米国産の安い輸入豚肉が流通するようになるので、今般の畜産農家の被害が最小限に抑えられることを祈りたい。

話はずれてしまうが、今年ヒットした映画『翔んで埼玉」に描かれているように、埼玉県民は東京との繋がりばかり意識するが、千葉、茨城、栃木、群馬の4県と県境を接する関東の要衝である。東京に近い都会的雰囲気と、農業や食品工業、組み立て型工業、物流拠点など北関東の郊外の雰囲気を併せ持つ埼玉は、日本で一番暮らしやすいと思うのだが、皆さんの評価は如何に。

「環境対策は『金もうけのチャンス』吉野さん会見」

本日の東京新聞夕刊に、ノーベル化学賞を受賞した吉野さんの会見の様子が紹介されていた。
環境対策というと工業に逆行する、コストのかかるものという前提があるが、吉野さんは「環境に優しくて安い製品を日本から発信すれば、世界制覇できる。大阪流に言えば、絶好の金もうけのチャンス」とまで言い切る。そして、自身が開発に貢献したリチウムイオン電池を中心に据えた持続可能社会について提言する。

現在開発が進む、リチウムイオン電池の進化型の「全固定電池」が実用化されると、ガソリン自動車や化石燃料発電所は駆逐されるとも言われる。私たちが享受してきた産業革命以降の社会のあり方そのものがパラダイムシフトを起こしていく。省エネや効率化といった、これまで日本が得意としてきた技術革新が全く通用しなくなる時代がこれから訪れるのかもしれない。

文系に進む生徒も、理工系に進む生徒も、吉野さんが描くこれから20年先の、脱化石燃料、脱原発の社会のあり方を展望してほしいと思う。

「新NAFTA修正合意」

本日の東京新聞夕刊に、アメリカとメキシコ、カナダと締結する「北米自由貿易協定(NAFTA)」に代わる新協定の修正案に、米国民主党も合意したとの記事が掲載されていた。

NAFTAについては、メキシコで製造された自動車や自動車部品が関税なしに米国に入ってきて、米国の労働者の雇用を奪っていると、トランプ大統領が就任前から不満を漏らしていた協定である。

記事に詳細は書かれていないが、米国に都合の良いようなセーフガードを盛り込んだ関税制度、貿易体制となっているのであろう。日本にとって「対岸の火事」と傍観できるようなニュースではない。地理の授業の中でも扱ったが、米国産原油の問題と絡めて、慎重に推移を後追いしたい。