地理」カテゴリーアーカイブ

「印の反中感情 スポーツ界に波及」

本日の東京新聞国際面より。
6月の分散登校中に紹介した、インド北部のラダックでの中印の軍事衝突の後日談である。インドと中国の両大国はブータンの東側と、パキスタンと領有を争っているカシミール地方に隣接したラダック地方の二つで、国境が未確定となっている。中国は「一帯一路」経済圏構想により、中国内陸部からインド洋に直接出ることのできる高速道路網の建設に乗り出している。それぞれミャンマーやマレーシア、バングラデシュ、スリランカなどのインドの東側の国と、パキスタンやアフガニスタン、イラン、イラクなどのインドの西側の国と連携を強化し、インドを取り囲むように経済だけでなく、政治や武器供与などでも協力関係が構築されつつある。一方、インドは米国との連携の緊密化を図っており、中国と米国とのいざこざがニュースに取り上げられない日は無いほどになっている。

TikTok だけでなく、クリケットなどのスポーツまで中印の不仲が表面化するという

「大統領派が過半数獲得」

本日の東京新聞朝刊に、スリランカの大統領選の模様が報じられていた。
まずスリランカと聞いてすぐにイメージできるだろうか。インドの先端の南東に浮かぶセイロン島に位置する国である。旧首都はコロンボである。現在の首都はコロンボの郊外に新たに作られたスリ・ジャヤワルダナ・プラ・コッテという街にある。赤道が近く、ケッペンの気候区分ではAfとなる。←分かるよね。

世界史の授業を思い出して欲しいのだが、スリランカは16世紀の初め、1505年にポルトガルの植民地となり、次いで17世紀の半ば、1658年にオランダの植民地となり、18世紀にはイギリス東インド会社によってイギリスの植民地となっている。大航海時代以降のヨーロッパの覇権をそのまま反映したような歴史を辿っている。そして現在は、「一帯一路」経済圏構想によってインド洋に進出してきた中国との関係を深めている。

北海道の8割くらいの大きさで、人口も日本の6分の1しかないのに、多言語・多宗教国家となっており、25年以上に及ぶ内戦を経験している。スリランカの7割を占めるシンハラ人(主に仏教徒)とインド系のタミル人(主にヒンドゥー教徒)との間で大規模な衝突が繰り返された。さらに欧州の植民地だったので、キリスト教のシンハラ人や、イスラム教のタミル人もおり、民族と宗教が入り乱れた内戦となってしまった。この点も授業での説明と合わせて理解できるだろうか。

小さい国ではあるが、日本との関係は良好で、現外務大臣の茂木外相も昨年スリランカを訪れている。私は授業の予習として外務省の国と地域に関するページを参照している。そのホームページに、スリランカに関するレポートが掲載されている。簡潔で分かりやすいレポートとなっている。
夏の宿題にいかが。

最近のスリランカ情勢と日スリランカ関係(令和2年2月)(PDF)

「香港・周庭氏に有罪判決」

本日の東京新聞朝刊に、香港の民主活動家の周庭(アグネス・チョウ)さんが、先月施行された「国家安全維持法」によって有罪判決を言い渡されたの記事が掲載されていた。罪状は無許可集会に参加したなどである。

彼女は日本への留学経験こそないものの、日本のアニメやアイドルが大好きで、アニメのセリフから独学で日本語を学んでいる。日本記者クラブでの会見の様子などの動画も公開されているので、気になる人は見てほしい。分散登校中だったので、全員ではないが、6月の授業中にも紹介している。

記事によると、量刑は12月に発表とのことだが、おそらくは刑務所に収監されることになるであろう。中国政府は、ウイグル自治区やチベット自治区と同様に、香港の独立を徹底して押さえ込もうとするので、民主化運動のアイドルである彼女にも相当の量刑を用意するであろう。

おそらくは次回の公判前に、英国への亡命などのアクションをとるのであろう。せっかく彼女は日本語がペラペラなのだから、日本に来れば良いと思うのだが、日本は政治的亡命をほとんど受け入れていない。日本の総領事館は香港の中心部にあるので、歩いてでも亡命することは可能であるのに。こういう時こそ日本政府の英断を期待したいところだが、憲法53条すら無視して臨時国会すら開かない与党に期待をかけるだけ無駄か。

「南シナ海 米中にらみ合い」

本日の東京新聞朝刊国際面に、南シナ海での米中の緊張が報じられていた。
記事によると、ベトナム沖の西沙諸島や、フィリピンやマレーシアなどが領有を主張している南沙諸島周辺で、中国軍が軍事演習や偵察活動を活発化させている。一方、中国軍の活動に現実的に対応できるのは米軍しかいないので、台湾などは米軍と歩調を合わせ、東沙諸島で駐留部隊の増強を図っている。

地理の授業で扱ったが、中国は習近平体制以後、「一帯一路」経済圏構想に基づき、中央アジアやインド洋での貿易をより活発化、安定化させていくために、周辺での軍事圧力を強化している。つまり、国家が貿易を支援するということは、軍事的な圧力を行使するということである。

世界史の授業でイギリス東インド会社やオランダ東インド会社を扱ったが、これらは純粋な貿易の企業ではない。軍隊が出動し、アジア一帯を制圧し、航路の安全を確保した後に、進出していって、中継貿易や三角貿易に乗り出していく会社である。その後の南アジア、東アジアがどのような悲哀を味わったのか、2学期以降の世界史の授業で追ってみたい。現在の中国が「軍事+貿易」という構想を手放さない限り、今度はアフリカ諸国が同じような歴史を辿っていくのかもしれない。