八王子の隣駅片倉から歩いて5分の場所にある,定員200名,法学部のみの小規模な単科大学である。室町時代に創設された学塾「柏樹書院」の600年の伝統と実績を受け継ぐ大学というのが宣伝文句であり,古事記や万葉集などの古典講読,茶道や剣道といった日本文化に関する授業を通じてリーガルマインドを学ぶというユニークな教育をとっている。
しかし,集まってくる学生は「多士済々」であり,勉強があまり好きではない受験生に狙いを絞ったためか,自由なスタイルを前面に押し出す通信制高校のようなパンフレットで,女子専用のパウダールームやカフェテリア,展望ラウンジといったおしゃれな施設紹介の写真が多い。また在学生も「お茶の時間にはなんと抹茶とお菓子が食べれます(笑)。学校内のパウダールームは大きな鏡があってとってもキレイだし,大きなホールはいかにも”大学”ってカンジ。」と気さくな意見を寄せている。
学歴不問の公務員や警察官を志望する学生が多く,カリキュラムも「警察学」や「少年非行論」といった科目が並ぶ。保護者同伴の入学説明会もあり,何も目標が見つけられない子どもを抱える近隣の親にとっては,一つの選択肢となるであろう。一般入試だけで9回もチャンスがあり,希望さえすれば合格は確実である。
「大学短大専門学校案内」カテゴリーアーカイブ
パンフレット研究:国士舘大学
国士舘大学のパンフレットを読む。
受験界でさんざん言い尽くされてきた中堅校レベルの代名詞ともなっている「大東亜帝国」の一角を占める全国区の大学である。政経学部,体育学部,理工学部,法学部,文学部そして21世紀アジア学部の6学部からなり,学生数は1万3千人を超える。今年の北京五輪で柔道無差別で金メダルを受賞した石井選手やサッカー部の活躍が目立つ。
元々は頭山満を代表とする右派政治団体玄洋社の流れを組むが,パンフレットを読む限り,研究所の一部に「真の日本人,国士の養成機関」「日本建設および世界平和…」といった大東亜共栄圏の現代版のようなニュアンスを感じるが,右派的な雰囲気はほとんど感じられない。
学生数も多いため,学部学科ごとに世田谷キャンパス,鶴川キャンパス,多摩キャンパスと3つに分かれざるを得ず,中規模大学のような大学としての統一感には欠ける。世田谷キャンパスは地の利も良く,学生募集もうまくいっているようだ。しかし,同じ学部でも学科で大きな差があり,初等教育では5倍を超える一方,中国文学科のように全入試日程で1倍の学科もある。その中でも21世紀アジア学部は鶴川キャンパスという山の中に追いやられ,受験生も集まらず,スポーツプログラムを開設するなど方向性を見失っている。
パンフレット研究:日産・自動車大学校
栃木、横浜、愛知、京都に4校ある日産の系列の4年制の自動車整備の大学校のパンフレットを読む。
1級自動車整備士の資格取得に向けたカリキュラムなので勉強の目的が見えやすく、また大学校なので専門の科目に専念できる。さらに、その後日産等のメーカー系列に就職ができる環境が整っているので、学生にとっては安心して勉強に打ち込める学校である。また、日産の最新の車両を扱いながら、学費は4年間で400万円と抑えられいるのでリーズナブルである。下手な大学の工学部に行って自分を見失うよりは親にとっても安心であろう。
女子学生が少ない学校なので、人寄せのためか在籍の女子学生の顔写真一覧のページもある。また、GT−RやフェアレディZ、シルビアといったスポーツカーを整備している写真が多く、車好きの少年の心をくすぶっている。
整備士養成のパンフレット一つとっても、車というのは一つの機械商品ではなく、人材育成から始まり、工場・販売網の拡張、商品流通のための町づくり、国づくりまで射程する一つの社会であるとつくづく実感した。
降旗節男という筑波大学の教授の著書の中で、日本の社会は全て自動車を売るために作られてきたという一節があったのをふと思い出した。自動車の広告のために新聞が発行され、自動車のCMのためにテレビが売られ、そして自動車を走らせるために国土が整備され、そしてそのような広告を鵜呑みにし自動車を購入する中流層を増やすための凡庸な学校教育が徹底したという論考であった。
パンフレット研究:中央学院大学
中央学院大学のパンフレットを読む。
今年の箱根駅伝で総合3位に入った大学として記憶に新しい。陸上競技部の他、硬式野球部、バレーボール部、サッカー部、ゴルフ部、応援部チアリーディングなどが有名である。千葉県我孫子駅からスクールバスで5分という、郊外では比較的便利な場所にある。大学開学は1966年であるが、1900年に発足した日本橋簡易商業夜学校が前身となっている。商学部と法学部の2学部からなる小規模の大学である。またそれぞれの学部がさらに複数のコースに分かれており、学生が選択に困らないように配慮されている。スポーツを目玉にしようという大学の戦略のためか、商学部にはスポーツキャリアコース、法学部にはスポーツと法コースが設置されており、運動部特待生の受け皿が用意されている。
入試の倍率は特待生以外ほぼ1倍であり、複数のAO入試や推薦入試、1科目入試、2科目入試などあの手この手を尽くしているものの、受験生集めは相当苦労しているようだ。これでは大学の先生も落ち着いて研究は出来ないであろう。
パンフレット研究:東京経済大学
明治・大正時代の実業家大倉喜八郎が創設した大倉商業学校が母体となっている歴史ある大学である。ちなみにホテルオークラも大倉喜八郎の長男が作ったものであり、大手ゼネコンの一角を担う大成建設も大倉喜八郎が創業したものである。
大学の方は伝統があり、学生も全学で5000人を超える規模があり、出身私立大学別役員・管理職数(全上場企業)でも駒沢や明学を抜いて全国27位であるにも関わらず、相変わらず地味な印象は拭えない。やはり国分寺という東京郊外に位置することと、「東京経済」という没個性的な大学名が元凶であろう。
短大が廃止され、経済学部と経営学部、コミュニケーション学部、現代法学部の4学部からなる。大学のパンフレットとしてはオーソドックスなものである。公認会計士養成の専門学校であるTACや大原学園、また語学学校のベルリッツといった学校と提携し、様々な資格取得を応援している。
薬害エイズの原告となり現在は参議院議員となっている川田龍平さんの母校でもある。また政治評論家の粉川哲夫氏や韓国の人権活動家徐京植氏、また中米の反政府運動の研究の第一人者である山崎カヲル氏らが教授を勤めている。教授や学生の実力からしたらもう少し人気が出ても良い大学である。


