大学短大専門学校案内」カテゴリーアーカイブ

パンフレット研究:国際教養大学

2004年4月に廃校した大学の跡地を活用して生まれた秋田県にある公立大学で、企業からの評価が極めて高いことで今注目の学校である。2013年版大学ランキングにおいて、学長からの評価では教育分野で、金沢工業大学、国際基督教大学に継いで3位、総合でも、東大や京大に継いで5位である。また、外国人教員の比率は47.8%、高校からの注目の新設大学というランキングではぶっちぎりの1位である。1学年200人弱の小規模な田舎の大学であるが、すでに入試ランクでは東大文系に並んでいるそうだ。

しかし、パンフレットを読む限り、国際教養大学では、特別な施設を作ったり、特殊な課程や科目を置いたりしているわけではない。1年次は「英語で学ぶための英語力」の養成を目指し、ひたすら英語集中プログラムを受講する。2年次は基盤教育という名の教養科目を受講する。そして3年次からグローバルビジネス課程とグローバルスタディズ課程に分かれて専門を身に付ける。20年くらい前の前期教養課程と後期専門課程に分かれていた大学のカリキュラムとほぼ同じである。「国際」という名前の通りに、英語で授業をやり、1年間の海外留学を義務づけ、少人数制授業によるコミュニケーション能力の育成と、幅広い知識、異文化思考養成の繰り返しにすぎない。卒業に厳しいハードルを設けて、当たり前のことを当たり前にやっているだけである。

ただ、国際教養大学の一つ特異な点は、1年間の寮生活を義務づけていることである。数十年前は東京の大学に全国から学生が集まり、下宿生活やサークル活動を共にする中で、学生ならではの活力が生まれていった。しかし、現在は地元志向が強くなり、東京の有名大学も首都圏の学生ばかりになり、同質性が強くなり活力を失っている。そうした中で地元があまりいない田舎の大学に全国から学生が集まり、24時間の共同生活をするという環境は素晴らしい。その一点だけを取り上げても、企業が欲しがるというのも頷ける話である。

パンフレット研究:東邦大学

大変丁寧な作りのパンフレットであった。手の込んだパンフレット構成を通して、大学自体の緻密な運営も垣間見えてくるようだった。
1925年に設立された帝国女子医学専門学校、1926年に設置された帝国女子医学専門学校薬学科と帝国女子医学専門学校付属看護婦養成所、1941年に設立された帝国女子理学専門学校を母体とし、1950年に東邦大学としてスタートしている。現在も東京都大田区の大森キャンパスに医学部と看護学部が置かれ、千葉県習志野キャンパスに、薬学部と、化学科と生物学科、生物分子科学科、物理学科、情報科学科、生命圏環境科学科の6学科からなる理学部が置かれている。
大変分かりやすいパンフレットで、医学部も含め全学部学科において、学生の声やカリキュラム、授業時間割、研究室紹介、将来の進路や資格、付属病院との連携について触れられており、大学生活の様子がよく分かる構成になっている。
また、学生納付金もしっかりと明示されているのだが、実習や研究授業が多い学部のみなので、学費は高めである。

パンフレット研究:秋田大学

戦前の師範学校と日本で官立唯一であった鉱山専門学校が合併し国立大学に変身した、典型的な「駅弁大学」である。1970年に医学部が設置され、1988年には教育学部が教育文化学部に、鉱山学部が工学資源学部に改組されている。
パンフレットをじっくり読んだのだが、不思議と全く心に残らない。「駅弁大学」+「医学部」の特徴でもあるのか、学部ごとにキャンパスが分断され、医学部独自の教育方針のためか、学部を越えた教養教育体制も取られず、挙げ句の果てには同窓会も学部ごとに設置されている。また、地域性もあるためか、あまり他県から入学する生徒も少なく、閉鎖的な雰囲気が否めない。
「世界に飛躍する医療人」「国際交流に貢献する人材の育成」といったキャッチフレーズが完全に浮いてしまっている。しかし、どの学部学科も5倍近い倍率があり、一定程度のレベルは保っているのであろう。評価は分かれるであろうが、当たり前のことを当たり前にやっている国立大学なのであろう。

パンフレット研究:滋賀大学

何とも評価しにくい大学である。教育学部と経済学部の2学部あるのだが、交通の便も良く、それぞれ一定の評価を得ている。
1922年に設置された彦根高等商業学校と1875年に大津に設置された小学校教育伝習所の2つの流れが、戦後の教育改革で滋賀大学と看板を変えただけで現在も続いている。JR東海道本線の快速で40分足らずの距離だが、教員レベルでも学生レベルでも交流は薄く、教養教育も部活動、寮もそれぞれのキャンパスで完結している。

学長の佐和隆光氏自ら、「二つのキャンパスに分かれていることから、教育と経済という21世紀の日本を支える二本柱を学ぶ学生諸君がお互いに意見を闘わせる機会が少ないのを、私は遺憾に思っています」と冒頭で述べている。そこで学長は「情報通信機器を有効活用して両キャンパスの学生・教職員のコミュニケーションの緊密化を図」ると提言しているが、時間とお金の無駄であろう。

同じキャンパスで、同じ教室で、同じサークルボックスで飲み語ることにこそ大学生活の原点があるというのが私の考える大学のあり方である。その中で多彩な交流や幅広い教養と体系だった専門を学び、自分自身の力で自分を発見する場がキャンパスである。だから時間的にも空間的にもキャンパスは「度量」の広いものでなければならない。滋賀大学関係者には申し訳ないが、「一県一国立大学」の「駅弁大学」(大宅壮一)を生んだ戦後教育改革の残滓であろう。歴史的、地理的に分断された2つの学校間で連携を図るのは、どれだけ情報通信が発達しても意味がない。

いっそのこと彦根にある滋賀県立大学と、大津にある滋賀医科大学と大合併をして一大学となった方が、まだスケールメリットを生かせるのではないだろうか。従業員を何万人も抱える大企業が合併する時代である。県と国の垣根を越えることも難しくはないであろう。

パンフレット研究:高崎経済大学

1957年に高崎城跡地に開学した、比較的新しい大学である。wikipediaによると、戦後県内の師範学校や医学専門学校、工業高校などの官立の高等教育機関が前橋を中心とした群馬大学に集約され、高崎市が経済経営系の誘致を計ったが実現しなかったため、独自に大学設置となったようだ。
2000年には大学院修士課程、2002年に博士課程が開設され、現在では経済学科と経営学科からなる経済学部、地域政策学科、地域づくり学科、観光政策学科からなる地域政策学部の2学部で構成されている。

カリキュラムは極めて普通というか凡庸な内容となっており、少人数のゼミナールと充実した情報設備と英語教育、就職サポートが宣伝材料となっている。一番のセールスポイントは学費や家賃が安いということだが、都心の文系私大との差は百万ちょっとである。就職やサークル活動を考えたとき、100万円ちょっとの差をどうかんがえるか。

学長自ら「数少ない全国型公立大学として全国各地からのみならず国外からも多彩な学生が集まり、キャンパスは多様性に富ん」でいると謳っている。しかし、合格者のうち辞退率が50%から60%近くあり、必ずしも第一志望の大学とはなっていないようだ。また地元の推薦枠も少なく、付属高校からの進学者も少ない。都心の大学の後追いをしていては、公立大学という存在意義は薄れてしまう。全国型を追求するのであれば、むしろ群馬大学と合併というイバラの道も考えた方がよいのではないだろうか。