投稿者「heavysnow」のアーカイブ

『映画より面白い』

西脇英夫『映画より面白い:読んで観ろ!必読原作セレクト100』(キネマ旬報社 2000)を読む。タイトル通り映画よりも面白いと断言できる原作が100作品紹介されている。実際に著者が映画を観た上で、原作を読んでおり、文章に説得力がある。特にジュラシックパークの映画の批判が面白かったので、紹介したい。

とくに小説におけるイントロ部分は、恐竜が出てくるまでの小さな恐怖をひとつひとつじっくりと積み重ねていて、ここが一番面白い。こういうところをズバーッとぶった切ってしまうスピルバーグには、もう昔の謙虚な姿はない。ピンク映画からドラマを奪って、即セックスシーンにしてしまうアダルトビデオのように味もそっけもない。

『生きることと学ぶこと』

早乙女勝元『生きることと学ぶこと』(岩波ジュニア新書 1997)を読む。
東京大空襲の体験を後世に伝える語り部の印象が強いが、小説家や児童文学作家としての作品も多い。1932年生まれの作者の戦争体験、戦後の不況の中での仕事、そして作家としてデビューするまでが綴られている。

ちょうど1990年半ばの神戸連続児童殺傷事件やいじめ自殺などの教育問題も取り上げられている。そうした問題の原因を管理教育や生きる力のない子どもに帰しているが、ちょっとステレオタイプな論調で納得できなかった。
一つ印象に残ったことを挙げておきたい。今後の参考としたい。

たとえば、オモチャ。その昔のオモチャは、子どもが自分の手で作って、頭を使い指を使い、ブーブーとかガーガーとか言って、からだ全体を動かして何らかの集団で遊んでいたものが、やがて電池入りとなり、いつのまにかオモチャが勝手に遊んでくれて、子どもは首を回して見ているだけ。いわば孤立した第三者、見学者にさせられたということです。
オモチャにとどまらず、ワンタッチですべて事足れりで、風呂一つ沸かすのでも、飯炊き一つするのでも、かつての子どもたちは大変な知恵とからだを使ったはずなのに、もうその必要はなくなりました。子どもを取り巻く環境は至れり尽くせりの柔軟構造へと変化し、「体得」の機会は家庭からも地域からも、ほとんど失われてしまい、人間的なぶつかり合いも希薄となった現実は否定できません。

「中東各地 衝突拡大リスク」

本日の東京新聞朝刊に、アラビア半島周辺の衝突に関する記事が掲載されていた。
先日イスラム教スンニ派の過激派「イスラム国(IS)」がイラン南東部で爆破テロを起こしている。パレスチナのガザ地区を実効支配するハマスも大半の住人もスンニ派である。そのスンニ派にレバノンのシーア派のヒズボラがハマスに同調してイスラエルを攻撃している。ヒズボラやイエメンの武装組織フーシ派を支援するのはシーア派の盟主イランである。そのイランに対し、アフガニスタンを拠点とする「IS」がテロを仕掛ける理由がよく分からない。

学生運動が盛んだった頃の「革マルVS中核」を彷彿させる。イスラエルが態度を硬化させている以上、内ゲバをやっている余裕はない。

『土の世界』

「土の世界」編集グループ『土の世界:大地からのメッセージ』(朝倉書店 1990)を読む。
主に大学の農学部の先生方が執筆された土に関する入門書となっている。最後に理科の教職課程に関する話が出ていたので、大学の地学教育を専攻する学生向けの参考書にもなっている。
途中化学式が出てくるが、植物や農作物は種から育つのではなく、土から育つものである。土の成分や微生物との関係がいかに大事かということが分かる。
いくつか参考になった内容を挙げておきたい。

造成地の土とまわりの森の土とでは一見してわかる違いがある。造成地の土はたいてい黄色か赤茶色であるが、森の土の表面には落ち葉が積もり、土の色は黒味を帯びている。黒い色は落ち葉などが変成してできた腐食と呼ばれる有機物の色で、腐食が多く含まれるほど土には植物の栄養が蓄えられている。このような養分の多い土を「土壌」と呼んでいる。土壌の「壌」は、長時間かけてできた肥えた土のことを意味している。おなじ「じょう」でも酉偏の「醸」が時間をかけて作り上げる酒の発酵を意味し、女偏の「嬢」が手塩にかけて育てられた娘さんに使われるのとまったく同じ意味で使われている。

植物は、みずから動いて食料を手に入れることはできないから、根を土の中にのばして養分を吸収するが、動物の消化器官に相当するものをもっていない。動物の消化酵素に相当働きを土壌中の微生物が果たしており、植物と協力体制が成立しているのである。したがって、多くの生命活動が活発に行われる場所こそが、肥沃な土壌と呼ばれるにふさわしい場所である。生命現象の痕跡が多く残っているほど、腐食が多く含まれ、土壌の成熟度は増すことになる。世界で最も肥沃な土壌とされている、ヨーロッパやアメリカの小麦地帯の腐食の多い土について、炭素の同位元素から年代を調べてみると、二千年から三千年前の、有機物が残っている。

台地を覆う火山灰の年代がわかれば、台地のできた年代がわかる。そのようにして日本では台地のほとんどが最近数万年間にできたことが知られている。なお先に触れた3つの平野(九州の宮崎平野、関東平野、北海道の十勝平野)は、いずれも火山の西側に位置しており、何段かに分かれた台地の上の段になるほど、火山灰が多く堆積している。たとえば、東京の西に位置する武蔵野台地では厚いところで8メートル、相模野台地では15メートル近くの火山灰が堆積している。

今から約2万年前には、海面の高さが現在の海面の高さより約100メートル低く、その後徐々に海面が上昇して、約六千年前にはほとんど今の海面の高さになったことが知られている。約六千年前の海岸線の位置はほとんど台地、丘陵、山地に接していて、平野はまだできていなかった。このことは、この時代に生きた縄文人がつくった貝塚が、現在の海岸線よりはるかに内陸の台地などの縁に多く分布していることからわかる。現在、川の下流部に広がる平野は、最近約六千年間に、川が運んできた砂や粘土が堆積してできたものである。

「雨降って、地固まる」という諺がある。実はこの諺には水分の変化がうまく表されており、正しく解釈すると「粘土を比較的たくさん含む土で家の土台を作った場合、雨が降って孔隙が詰り、その後の乾燥に伴って地面が絞め固まる」となる。泥団子の場合を同じで、砂ばかりでは地は固まらない。

土の中にはどのくらいの数の生き物が住んでいるのだろう。ミクロなサイズの生物を数えるのはなかなか難しいが、わずか1グラムの土に、たとえば、カビが約十万、細菌が約1億といわれている。しかし、一つ一つが非常に小さいので、その重さが土全体の重さに占める割合は普通は1%以下で、そのわずかな部分が土の中の物質変化の大半を受けもっているのである。

褐色森林土
日本の産地のほとんどを覆っている。温暖多雨の気候下でできるので酸性を示す。上には未分解の枯葉や枯枝が堆積している。森を歩くとフカフカなのはこのためである。その下に、暗褐色〜黒色の腐食を含む表層がある。枯葉の養分は表層に集積され、再び利用される。この薄い表層は小動物から昆虫、きのこ、かび、微生物に至るまでの膨大な数の生物のすみかになっている。

『翔んで埼玉 〜琵琶湖より愛をこめて〜』

ララガーデンで、武内英樹監督、GACKT主演『翔んで埼玉 〜琵琶湖より愛をこめて〜』(東映 2023)を観た。
埼玉の東西を結ぶ武蔵野線や行田タワーなど、埼玉ワードが飛び交う想像の通りの内容であった。ただし、話がぶっ飛んでいるので、飽きることなく楽しむことができた。「とびたくん」という交通安全啓発のために設置された「飛び出し注意」の看板が滋賀県で多数設置されているなどの豆知識も面白かった。