『数字で見るエネルギーの話』

太田時男『数字で見るエネルギーの話』(三田出版会,1991)を読む。
消費が美徳とされたバブル華やかりし頃の本である。そうした時代の中でエネルギーの浪費・無駄を警告するための本である。さらっと読み飛ばすつもりであったが、内容も面白く、最後まで飽きることなく読むことができた。

エネルギーというのは仕事をする能力で、必ず「機械的エネルギー」「電気的エネルギー」「光エネルギー」「化学的エネルギー」「熱エネルギー」の5種類に分類できる。

太陽電池の出力は数個つなげば高いボルトになり、また直流の電流が得られるので、電池の充電や水の電気分解用にちょうどあっている。水素が電気エネルギーとともにエネルギーの媒体として使われる時代になれば、太陽電池の活躍する役割が、ますます増えるであろう。これはすでに実現している。あとは採算ラインの問題である。

潮汐発電のように、月の公転運動エネルギーが、もしほんの少しでも利用できれば、世界のエネルギー事情はほんとうに楽になる。1987年に日本で一年間で使ったエネルギーの2億倍もあるのだから。これはどこかで紹介したい。

1990年頃は日本は世界一の製鉄国家だったので、日本が輸入する石炭の90%弱が製鉄工場で使用されていたのである。へえ〜。

エルニーニョ現象で海水の温度が上がると海水中の二酸化炭素が大気中へ放出され、海水中の濃度が低くなって、サンゴ礁など二酸化炭素をたくさん必要とする生物が死ぬことになる。サンゴ礁が生きていたころより海水中の二酸化炭素の吸収能力が小さくなるので、大気中の二酸化炭素が増えるのである。サンゴ礁の死滅が温度ではなく、二酸化炭素が大きいということが理解できた。

アルミニウムはアルミナ鉱石を1,000度の高熱で溶かし、さらに1トンのアルミニウムを作るのに、290万キロカロリーものエネルギーを電気エネルギーの形で消費する。そのため、アルミニウムの値段の30%以上が電気エネルギーである。水力発電の盛んな地域で作られるというのが理解できた。