投稿者「heavysnow」のアーカイブ

『蒸気機関車』

万有ガイドシリーズ『蒸気機関車:日本編』(小学館 1981)をパラパラと読む。
明治維新から第二次世界大戦まで、日本の貨物と旅客輸送の根幹を担った160余の蒸気機関車が丁寧に解説されている事典である。1871年製造の日本初の第1号機関車の150型に始まり、1948年製造C62型で新規設計機関車は幕を閉じる。それ以降、車両の改造が行われるが、それも1959年のD61型で終わりを告げる。

石炭火力を用いてシリンダー内のピストンを動かし、それによって生じた反復エネルギーを歯車の組み合わせで車輪の回転まで伝えていくという、武骨な構造を持つ乗り物なので、外観もゴツい。ただし、冷却のためかシリンダーのパイプが表に出ており、蒸気の流れなどを想像することができるので楽しい。

「独 難民へワクチン着々」

本日の東京新聞朝刊より。
ドイツは人口が8300万人おり、その約2%にあたる190万人を難民として受け入れている。UNHCRの資料によると、ドイツはシリア、イラク、アフガニスタン、エリトリア、イラン、トルコ、ソマリア、セルビア、コソボ、ロシア、パキスタンの国々から難民を受け入れており、欧州では断トツで多い。国境を接するからの避難民を受け入れている国はトルコやパキスタン、レバノン、ウガンダなど数多くあるが、遠方の国から政府の予算を用いて難民を支援する国は、他にフランスとアメリカを数えるだけである。

記事は ちょっと美談調で、国内の難民受け入れへの反発や、これまでのメルケル首相の政策への支持の低下などにふれられていない。ただ、記事の最後の「ドイツは身一つで来た人たちにワクチンを提供してくれる。彼らが社会の一員として受け入れられた気がする」と述べるスタッフの言葉は重い。日本に暮らす皆さんはどう考えますか。

『たけしのグレートジャーニー』

ビートたけし『たけしのグレートジャーニー』(新潮社 2014)を読む。
2008年から2013にかけて雑誌「新潮45」に掲載された11人の学者との対談がまとめられている。冒頭は、アフリカで誕生した人類が南米のチリまで旅立っていった「グレートジャーニー」5万キロの行程を、10年弱の期間を使って自らの腕力と脚力と自分で操れる動物の力だけで遡行した冒険家の関野吉晴氏との対談である。ベーリング海峡を渡る際に風速5メートルから10メートルの偏西風に悩まされたため、「逆ルートは無理があります。やっぱり人類は逆ルートでは移動しないことが、やってみると分かります」とこぼしている。

その他、文化人類学者の西野雅之氏、植物探検家の荻巣樹德氏、ゴリラ研究家の山極寿一氏、シロアリ研究家の松浦健二氏、ウナギ研究家の塚本勝巳氏、辺境生物学者の長沼毅氏、海洋動物学者の佐藤克文氏、ダイオウイカ学者の窪寺恒己氏、奇抜なファッションを纏う火山学者の鎌田浩毅氏、宇宙物理学者の村山斉氏との対談が収められている。変人は東大と京大に多いということが分かる。鎌田氏の著作にはこれからじっくりと向き合っていきたい。

『エベレスト・ママさん』

田部井淳子『エベレスト・ママさん:山登り半生記』(山と渓谷社 2000)を読む。
1976年2月から11月まで雑誌『山と渓谷』に連載されたものである。著者の田部井さんは、1975年5月に女性で世界初の世界最高峰エベレスト8,848m(ネパール名:サガルマータ、チベット名:チョモランマ)登頂に成功した人で、その後1992年には、女性で世界初の七大陸最高峰登頂者となっている。

本書は登山途中の苦労だけでなく、仲間同士のギクシャクした関係や結婚・出産にまつわる悩みも赤裸々に綴られている。現在のようにzoomなどのネット会議での根回しもできないので、話一つ進めるにしても意見の対立や人間関係の亀裂を生み出してしまう。物事を進める側の苛立ちがはっきりと書かれていて興味を引いた。

「イラン新政権を中東警戒」

本日の東京新聞朝刊記事より。
地理Aは2学期より西アジアに入っていく。イスラム教と切っても切れない地域である。その中東地域の2大大国がイランとトルコである。イランは人口8,280万人、トルコは8,315万人と拮抗している。次に、アフガニスタンの3,890万人、イラクの3,887万人、サウジアラビアの3,370万人と続いていく。イランの影響力の大きさが分かるであろうか。

そのイランはかつてペルシャと呼ばれた国で、紀元前からの歴史がある国である。また、イスラム教の1割強を占めるシーア派を信奉する国として知られる。同じイスラム教の多数派のスンナ派とは歴史的に仲が悪い。1980~88年まで続いたイラン・イラク戦争は、シーア派のイランによるイスラム革命の影響が及ぶことを恐れたサウジなどの湾岸諸国が、当時はスンニ派政権だったイラクを後押しする構図であった。

イランを盟主とするシーア派はイラクだけでなく、シリア、レバノン、イエメンにも多くの信者がいる。シリアではアサド政権がシーア派に近いアルウィー派と蜜月な関係にあり、ロシアやイランの協力を得て、国内のスンナ派への抑圧が続いている。また、レバノンでは人口の半分弱を占め、シーア派の武装組織のヒズボラが活動をしており、政権の不安定要素となっている。記事にもあるが、イエメンでもサウジに対抗する反政府武装組織のシーア派をイランが支援している。

このようにシーア派のネットワークがスンナ派の中心国であるサウジアラビアを取り囲むように構築されている。これまで米国はイランを敵視し、スンナ派のサウジアラビアとの関係を大切にし、中東の番犬としてイスラエルの軍備増強に力を注いできた。しかし、バイデン政権成立後、米国の中東への関わりが低下しつつある。そうした中で、中東がどのような秩序を模索していくのか、日本にとっては対岸の火事ではない。むしろ中東との政治的利害関係の薄い日本としては、親日家の多いイランとの関係をこれまで以上に太くしておきたい。