投稿者「heavysnow」のアーカイブ

『黄泉から来た女』

内田康夫『黄泉から来た女』(新潮社 2011)を読む。
著者が70代後半だった頃の作品である。京都府宮津市天橋立と山形県鶴岡市羽黒町手向の2つの町を舞台に起こった連続殺人事件に浅見光彦が挑む。名探偵浅見光彦の閃き通りに謎が解けていくので、幾分興味が削がれたが、出羽三山を参拝する千葉県の講の話など興味深かった。内田康夫ミステリーとして完成度の高い作品であった。

千葉県立中央博物館のホームページから引用してみたい。

千葉県は全国的に見てもとりわけ出羽三山への信仰が盛んな地域として知られており、「男は一生に一度は三山(サンヤマ)に行くもの」という意識が根強くあります。サンヤマといえば千葉県では出羽三山のことで、サンヤマへの登拝を「奥州参り」といいます。出羽三山への登拝は、山に集まる先祖の霊を供養するためであり、また、山を巡ることで生きながらにして死後の世界を体験し、穢れに満ちた身を捨てて蘇ること(擬死再生)ができると考えられています。

「『森林限界』ってどんな場所?」

本日の東京新聞朝刊に、将棋の藤井聡太さんが発言した「森林限界」についての解説記事が掲載されていた。森林限界とは地理の擁護で、記事では「冬の寒さや乾燥、強い風、土壌などの条件で樹木が生存できるギリギリのラインで、標高や緯度による。気候などの変化で上がったり下がったりする」と解説されている。気になったので、少し森林限界についてまとめてみたい。

では、実際に地形図から探ってみたい。下図は日本で2番目に高い南アルプスの北岳周辺の地形図である。25,000分の1の地形図なので、50メートルごとに太い計曲線が刻まれている。標高3,000メートル以上は植物が生えていないことがわかる。また、3,000メートル以下には地面に這うように生える「ハイマツ」が自生している。また、2,600メートル以下の南側斜面になると松や杉などの針葉樹林帯がみられる。

南アルプスの森林限界はおよそ3,000メートルで、杉や松などは2,600メートルとなる。

 

『さらばモスクワ愚連隊』

五木寛之『さらばモスクワ愚連隊』(講談社文庫 1982)を20年ぶりに読み返す。
1967年に刊行された本で、何度も文庫化されている作品である。表題作の他、有名な高円寺竜三が登場する「艶歌」を含め4作品が収録されている。

ベトナム戦争やヒッピームーブメント、高度経済成長期のドタバタなどが物語の背景に描かれており、当時はかなりのインパクトがあったのであろう。

『雪煙をめざして』

加藤保男『雪煙をめざして』(中央公論社 1982)を半分ほど読む。
Wikipediaで調べたところ、著者8000メートル峰に4度、エベレストに3度の登頂を果たし、世界で初めてエベレストをネパール、チベット両側から登頂している。また、世界で初めてエベレスト3シーズン(春・秋・冬)登頂にも成功している伝説的な登山家である。著者は3度目の冬季エベレスト登頂に成功したものの、その下山中に消息を絶っている。

本書は最後のエベレスト登頂に出発する前に書かれたもので、凍傷や滑落、大怪我の様子が淡々と書いてあり、半世紀前の登山のプロの世界を垣間見た気がした。ただし、地図もなく、周囲の人に説明もなく、本当に著者自身の言葉で綴られているので、全体像は分かりにくい。