投稿者「heavysnow」のアーカイブ

『わが子を救う教育サバイバル術』

早稲田アカデミー社長 須野田誠『わが子を救う教育サバイバル術』(グローバル出版 2002)という塾の宣伝本を読む。
塾というのが単に学校の予習補習的なことをやっていれば事足りる時代は終わって、生徒一人一人のカウンセリングや入試動向の研究といったコンサルタント機能が問われる時代が来ていると述べる。早慶付属高校合格実績全国一の塾を経営する著者は、大学進学率で私立学校に完全な遅れを取った都立の現状に批判的であり、引いてはゆとり教育を押し進め、「学力低下」を招いている文科省の方針自体に懐疑的である。
しかしあまたある塾関係の案内パンフと大差はなく、週休2日で暇を持て余している小中学生の親の不安や不満をいたずらにかき立てて、学歴という一定程度安定した保証を商売のネタにしているだけである。『自由からの逃亡』にもある通り、選択が自由になればなるほど人間は旧来の安定を求めたがるものである。学力低下イコール旧来のガンバリズム礼賛といった安直な塾の宣伝文句に絡めとられないためには、地域と一体となった面倒見の良い異年齢が共に親しみあうような教育システムへのこだわりが求められる。

この本に紹介されていた新宿にあるSEGという数学英語物理化学の専門塾が気になった。学校の定期試験用の勉強は一切行っていないとのことである。ホームページを見ると「速読による能力訓練講座」と「文章表現スキルアップ講座」といった予備校らしくない講座に寄せる受講生の声が面白い。

免許更新

本日の午後、鴻巣まで免許の更新に出かけた。途中,白岡の田舎道をゆっくりドライブした。そして,いつも通りの淡々とした話しとビデオ映像が続く講習を受けてきた。ビデオではスピードの出し過ぎについて注意を喚起するブレーキ実験の映像が映し出された。制動距離は速度の二乗に比例するので、制限速度を守りましょうというものだが、改めてこの「二乗」の恐怖を思い知った。また埼玉県の自転車事故は5年連続全国ワースト1位もしくは2位ということだ。ちなみに昨年の1位は愛知県である。確かに埼玉県民の自転車の運転は荒い。

それにしても免許センターというところは代わり映えのしないところだ。ここ最近、市役所や区役所がとみにCSを意識し、郵便局も公社化によって変わり、町中の交番の対応もかなり改善されてきたのに、免許センターは相変わらずの役所仕事という雰囲気が漂っている。陸運局もそうだが、お役所お抱えの天下り先となるようなところが一番改革が遅れやすいのだろう。

『アメリカひじき・火垂るの墓』

野坂昭如『アメリカひじき・火垂るの墓』(新潮文庫 1972)を2か月前から読み始め、しばらくほっぽいておいたのだがやっと読み終えた。
1930年生まれの作者の直接体験がもとになっており、戦争末期の社会の混乱をいつも空腹に喘いでいる少年の目を通して描いた作品だ。『火垂るの墓』はアニメ映画にもなり、少々きれい過ぎると感じていたが、『アメリカひじき』は戦争における人間のいやらしさが描かれていて面白かった。敗戦直後のGHQに対する卑屈な思いが、大人になってアメリカ人に対する過度な奉仕精神となって現れる主人公の姿がそのまま日本の姿と重なっている。

葛西臨海公園〜六本木ヒルズ

昨日葛西臨海公園に出かけてきた。観覧車に乗ったが、生憎の曇り空で、上に上がっても何も見えなかった。そして観覧車に乗りながら、なぜ人は高いところへ登りたがるのだろうと考えた。創世記のバベルの塔ではないが、高い所に登りたがるのは人間の本性なのだろうか。

帰りに六本木ヒルズへ寄ってきた。こちらは完全な「お登りさん」ならぬ「お上りさん」である。敷地面積が東京ドーム数個分の広さがあるそうだが、ブランドの店ばかりでほとんど興味を引くような所はなかった。
ただ駐車場にはびっくりした。2700台近くが地下の駐車場に格納できるとのことである。入庫から出庫まで全てコンピューターで制御されている。SF映画に出てくるような近未来都市の風景である。

200306roppongi
私の愛車が六本木ヒルズの壁の中へ格納されていく

『中国がシリコンバレーとつながるとき』

遠藤誉『中国がシリコンバレーとつながるとき:中国発出全球人材信息網』(日経BP 2001)を読む。
遠藤さんは筑波大学留学生センター(物理工学系)の女性教授である。ルポルタージュの形式で、シリコンバレーで活躍する中国人留学生やベンチャービジネス華やかな中国沿岸地域の模様を伝える。彼女自身中国東北地方生まれということもあり、遅々として改革の進まない日本の産業構造と中国の産学協同での経済政策の溝に、自らのアイデンティティの揺れをなぞらえている一風変った作品である。読み進めながら既にシリコンバレーで働く者の半数以上を有色人種が占め、その大半がインドと中国というのが現実だ。すでに日本のIT産業企業を解雇され、中国のベンチャーに再就職をするという日本人が出て来ている。政府もマスコミもこぞってアメリカにしか目が向いていない現実が逆に見えてきた。