『向日葵の若者たち』

鈴木静子『向日葵の若者たち:障害者の働く喜びが私たちの生きがい』(本の泉社 1998)を読む。
著者は埼玉県川口市にある千代田技研というアルミや亜鉛のダイキャスト鋳造の会社の社長を営んでいる。千代田技研では20年前から就労の難しい知的障害者を多数受け入れ、障害者と共に働く喜びを社員全員で共有している会社である。特に知的障害というと簡単な軽作業しか出来ないと一般に考えがちであるが、この千代田技研では障害者の正確な作業と真面目な勤務態度を正当に評価し、難しい機械のコントロールを任せている。また障害者自身が指導者となって後輩の面倒も見ているそうだ。得てして福祉の世界では、自らの力でお金を稼ぎ、自ら自立して生活するという生活の基本が二の次にされてしまうことが多い。障害が重ければ重いほど、保護の対象となってしまう。しかし、学校を卒業して家でぶらぶらしていることほどつらいものはない。どんな形であれ(勿論人間としての最低限の保障はなされた上で)卒業後の就職、勤労意識による人間的成長の場を設けなければならない。

著者はそのような状況を踏まえ、障害者の指導に当たる公的な専門員の制度を提案する。障害者の対応に長けている専門員が、一定期間、企業で障害者の教育、指導に当たってくれたら、ますます障害者を受け入れる企業が増えていくだろうと述べる。著者の言うように、人生の大半は働かなくてはならないのであり、障害者のスムーズな就職を支援する掛け橋のような専門員が求められるのは言うまでもない。

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