西平直『シュタイナー入門』(講談社現代新書 1999)を読む。
シュタイナーの自由な教育理念を実践する「シュタイナー学校」は世界で700を超えるが、その思想の提唱者であるルドルフ・シュタイナー(独 1861~1925)自身は、「オカルト」のレッテル張りによって教育史の本からすらも抹殺されてしまっている。彼が創設した「自由ヴァルドルフ学校」では、ある一つの単元を4週間ぶっ続けで行なう「エポック授業」と、人間発達に沿った「八年間一貫担任制」を特徴とする。そして、全ての教科において芸術的な表現力を付けることが追求される。
シュタイナー学校といえば「自由」が売りということになっているが、この学校では教師の「権威」がとても大切にされている。それは、抑圧的な力ではなく、子どもたちが自発的に従ってゆくような魅力である。著者の西平氏は、「シュタイナー教育は、『自由への教育』であっても、子どもたちを勝手気ままにさせておくという意味での「自由な教育」ではない。子どもたちが自由な存在になってゆくためには、一度、適切な時期に、権威に従うという「逆説的な」体験を経る必要がある」と述べる。現在の「生きる力」や総合的な学習の時間を先取りしたような学校で、私も時間が許せばやってみたいカリキュラム満載である。
しかし、シュタイナー自身が考える理想的な教育は、前世からの因縁によってこの世に生を受けた「魂の教育」と定義されるものであり、霊的(精神的)な世界への陶冶と位置づけられている。その内容は、インド哲学のカルマや仏教的な輪廻転生によって世界が構成されているといった禅問答に近いチンプンカンプンなものである。著者が「その学校は歓迎されその思想は敬遠される」と評する所以である。