『古伝空手の発想:身体で感じ、「身体脳」で生きる』

宇城憲治監修・小林信也『古伝空手の発想:身体で感じ、「身体脳」で生きる』(光文社新書 2005)を読む。
これまで30数年当たり前のようにあった自分の身体意識そのものが覆されるような、目からウロコが落ちるような内容で一気に読んでしまった。宇城氏は伝統的な型を重んじる心道流空手の師範であるが、現役のフルコン選手の突きを見事の見切り、反撃してしまう達人である。
宇城氏は頭で相手の動きに反応し、鍛えた筋肉を意図的に動かすような動きを否定し、呼吸を調え、気を身体に充実させ、気の統一体を作ることで、機先を制し、爆発的な力を得る事ができると説く。そして、そうした「身体脳」を鍛え上げる道標は空手の型の修業にあると述べる。
本書は、単に机上の空論のみが展開されているのではなく、随所に身体全体を統一して使う動きが紹介されている。試しにイラストの通り身体を動かしてみると、ものの見事に力みが抜けて、すーっと身体が伸びていくことが実感できて、大変興味深かった。武道に興味を持っている方に是非一読をお勧めします。
また、宇城氏は沖縄空手を単なる護身術や格闘技としてではなく、調和する社会に生きる人間をつくるためのものだと捉える。宇城氏の次の言葉が印象に残った。

沖縄は約600年前、北山、中山、南山の三山に分かれて対立していた時代に、国を統一するために武器を捨て、平和の道を選んだ歴史があります。この歴史から武器をもたない手、現在の空手が生まれました。これが空手のルーツです。人を大切にする、争わない手の歴史こそ沖縄の心です。
スポーツのようにルールの中で勝敗を競う相対的な世界では、真の技は身につきません。調和融合を求める絶対的な世界に身を置いて稽古してこそ、技の無意識化はできます。

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