『中国詩人伝』

陳舜臣『中国詩人伝』(講談社文庫 1995)を読む。
授業で唐詩を扱うので、手に取ってみた。紀元前4世紀の屈原から20世紀の魯迅まで、2000年以上に亘る20数名の詩人とその代表作が紹介されている。白居易や王維は言うまでもなく、「七歩詩」で知られる曹植や、「春宵一刻値千金」で知られる蘇軾などの来歴について知ることができた。また、日本では意図的に、詩と政治の関わりが避けられてきたが、中国では王安石の新法施行以前まで科挙に詩作が課せられていたこともあり、政府や政治への皮肉が込められた詩も数多く生み出されている。魯迅も50ほどの旧体詩を作っており、上海事変を嘆く詩なども作っている。

また、陳舜臣氏ならではの視点も紹介されている。有名な項羽の抜山蓋世の歌であるが、陳舜臣氏は、その歌に、自らが招いた敗戦の責任を時勢のせいにしたり、自らが酷使してきた名馬の騅が歩みを止めたのを騅のせいにする項羽という人物の性格が表れていると指摘する。一方で、劉邦の「大風起こりて雲飛揚す 威は海内に加わりて、故郷に帰る 安くにか猛士を得て四方を守らん」という歌を引いて、そこに、優れた兵士を集め、この国を守らせたいという劉邦の部下に対する信頼感があると述べる。確かにこの2つの詩を並べてみると、なるほどなと思う。授業の雑談として活用してみたい。

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