『内灘夫人』

五木寛之『内灘夫人』(新潮文庫 1972)を30年ぶりに読み返す。
確か高校時代に買った本で,高校卒業後10回近い引っ越しを経ても,ずっと手元に置いてあった本である。
1968年から69年にかけて東京新聞に連載されたもので,内灘闘争やメーデー事件など1950年代前半の学生運動で夢破れ,高度経済成長の10数年を生きてきた夫婦の思想のすれ違いがモチーフとなっている。夫の沢木良平は会社を経営し,学生運動と訣別をしながらも,時代や世代の違いに戸惑いを隠せない。妻の沢木霧子は学生の持つ直向きさを忘れることの罪に悩まされ続ける。最後に霧子が再び金沢・内灘で一人のプロレタリアートとして力強く生きていこうとする場面で物語は終了する。

こんな本を高校時代に愛読していたのだと,自分自身が高校・大学時代からの距離感,いや隔絶感に捕らわれた。子どもたちが全員大人になる10数年後にもう一度読み返してみたい本である。
そう言えば,そろそろ本棚に鎮座している『青春の門』も読み返さなくては。