中嶋洋介『交渉学』(講談社現代新書 2000)を読む。
交渉の現場における相手との駆け引きや交渉のプロセスやメカニズムについて分かりやすくまとめられている。
著者自身が㈱神戸製鋼所で企業や役所相手に積み重ねてきた交渉における経験則が土台となっている。
著者は交渉マネージメント能力として以下の10点を挙げている。
- リーダーシップ:場所の準備や交渉の進行作業など、できる限りこちらで準備した交渉手順やルールに従って交渉を進めていく能力。
- ポジショニング能力:交渉当事者間のパワーバランスを変化させる能力。交渉可能領域を作り出したり、相手よりも有利な立場に持っていく実務能力。
- 交渉シナリオ策定能力:交渉の最終目標に向けて計画的、組織的整合性をもって働く交渉のシナリオを策定する能力。
- 交渉力の効果的運用能力・交渉演出力:営業だけでなく、技術や経理、品質管理のメンバーにもそれぞれの役割を与えるなど、全ての交渉力を効果的に運用する能力。
- プレゼンテーション能力:交渉相手を論理的に説得する論理性や平易性、表現力や言語力。
- 状況対応能力:予想し得ない状況に対しても、その場で修正する知見や経験、推論力や集中力。
- 交渉人の能力:何日間も毎日同じ内容の主張を繰り返すといった、集中力や実行力。
- 交渉評価能力と決断力:交渉の全ての局面で相手の反応を的確に分析する冷静さやロジスティッック能力、分析力や決断力。
- 秘密保持と統制能力:自らの組織から漏れる秘密を保持するための情報コントロール。
- 文書化能力:トラブルを避けるために、交渉の経緯を確認するための覚え書きなどの文書化作業。