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『わたしは趣味のエコロジスト』

室田武×赤星たみこ『わたしは趣味のエコロジスト』(メディアファクトリー,1993)を読む。
この手の環境に関する本は、「〜〜すべきだ」「〜〜を心がけよ」といった教条的な物言いが多く、ちょっとうんざりしながらページを繰っていった。しかし、本書はタイトルに「趣味のエコロジスト」とあるのように、日常生活の中で無理せずに継続できる形で、合成洗剤の使用を減らしたり、ゴミの分別を意識したりすることが大事だと述べる。

日本の場合、とにかく人間の排泄物というのが肥料として貴重な資源だったから、そもそも下水道を普及させる必要はなかった。しかし、明治になってなぜ下水が出てきたことかと、大雨のときに都市でよく洪水が起こったので、雨水を早く海に流すのが主たる目的であったそうだ。
西洋の国では、だいたい人糞を不浄視する考え方があって、それを農地にきちんと入れる習慣がない国もあった。フランスのパリでは農地に還元しないから街路の上にぶちまけたりして、これでは汚いし臭いがきついし、それで悪臭や伝染病を防ぐために下水道ができた。

水は液体の時は空気より重いけど、期待になると空気より軽くなる。分子量でいうと、H2Oは18にしかならない。一報大気のN2の分子量は28、酸素の分子量は32ということで、28と32の重さのものが4対1で混じっている。それに対して水蒸気というのは18しか重さがないので、浮力が発生してどんどん上空に昇っていく。
水分を吹くんでいる空気はなんとなく重そうな感じだが、実際は軽いので上空へと上がっていく。

日本の水田農業は理想に近い農業である。水田は山の養分をそのまま利用しているので、化学肥料をそんなに使わなくても7割くらいは穫れるはずである。ところが、大陸のヨーロッパでは、アルプスの周辺は別として、日本みたいに山岳地帯がないから山からの養分があまりない。ヨーロッパでは地力を維持するということで、連作障害が出ないようにして休耕する部分をかなり残しながら、近くに林を人為的に育てておいて、その落ち葉を入れる。だから、畑とその周辺の林を一体のものとして考えるのが三圃式農業である。

『オウムからの帰還』

高橋英利『オウムからの帰還』(草思社,1996)を読む。
最初はさらっと読み流すつもりであったが、最後までじっくりと読んだ。サリン事件の後にオウム真理教から脱退した著者が、自身がオウム真理教に入信し、やがて出家し、過酷なイニシエーションに耐えながら占星術のプログラミングの修行に邁進する前半と、サリン事件の強制捜査以降、オウム真理教に疑問を抱いて脱退し、テレビ番組で上祐史浩氏との対談中に、直属の上司であった村井秀夫氏の刺殺事件の一報が報じられる後半がテンポよく描かれる。重っ苦しい手記を読んでいるというよりも、SF小説を読んでいるような軽快感を感じた。

また、読みながら、1995年という激動の年に思いを馳せた。自分自身が深夜に上九一色村にドライブに出かけたことや、一方でオウム真理教に対する破壊活動防止法適用に反対するデモに参加したことなどを思い出した。

「ベネズエラで米軍人ら拘束」

本日の東京新聞朝刊に、ベネズエラで大統領暗殺計画に関与したとして、 米国の軍人が拘束されたとの記事が掲載されていた。事実であるならば、米国はいまだに反米左翼政権を転覆させるテロやクーデターを実行しているのかと驚いた。まるで50年前のチリ・クーデターではないか。

チリ・クーデターとは1973年に南米チリで起きた事件で、左翼人民政権のサルバドール・アジェンデ政権の転覆にチリ軍が蜂起した軍事行動のことだが、のちに米国CIAが深く関与していたことが明らかになっている。

米国は民主党政権の時に際立つが、人権・民主主義・自由を押しつぶす独裁政権に対し、世界の警察を気取って、米国流の政治スタイルを押し付けようと画策してきた歴史がある。現在でもウクライナのゼレンスキーを利用して、ロシアのプーチン政権に対する武力攻撃だけでなく、メディアやSNSを活用した批判を展開している。記事を通して、米国に靡く国に対しては同盟国として軍事費や基地を押し付け、米国を反目する国は徹底して潰しにかかる米国の迷惑な世界戦略を見据えたい。

『深夜草紙』

五木寛之『深夜草紙 Part.3』(朝日新聞社,1978)を読む。
高校生の頃の読んだことのある気がするが、シリーズものなので勘違いかもしれない。1977年から78年にかけて週刊朝日に連載されたエッセーがまとめられたものである。
自民党の総裁選に関するニュースがテレビやネットで喧しいためか、次の一節が気になった。

異国へ出た日本人の同胞の大半が、どこかでそんな感慨(水と安全はタダで手に入ると思い込んでいる日本人は楽なところに生きている)を抱いて帰ってくるのではないか、と思った。そしてその実感が、〈ニッポン良い国〉から、〈日の丸最高〉の感情へエスカレートしてゆく心理の道筋がわかるような気がした。
良い国だから守らなければならない、守るためには戸締りが必要である、という例の発想だ。

『英語発音に強くなる』

竹林滋『英語発音に強くなる』(岩波ジュニア新書,1991)の「はじめに」の項と「おわりに」の項だけ読む。
著者は『ライトハウス英和辞典』の編集を担当する音声学の研究者である。辞書的に母音、子音だけでなく、その組み合わせによる発音の変化などが細かく説明されている。動画であればもっと分かりやすいのだが、致し方ない。リスニングのコツとしてNHKの基礎講座を聞くとか、欧米人が吹き込んだテープを毎日聞くなど、30年前の時代を感じる内容であった。