高橋英利『オウムからの帰還』(草思社,1996)を読む。
最初はさらっと読み流すつもりであったが、最後までじっくりと読んだ。サリン事件の後にオウム真理教から脱退した著者が、自身がオウム真理教に入信し、やがて出家し、過酷なイニシエーションに耐えながら占星術のプログラミングの修行に邁進する前半と、サリン事件の強制捜査以降、オウム真理教に疑問を抱いて脱退し、テレビ番組で上祐史浩氏との対談中に、直属の上司であった村井秀夫氏の刺殺事件の一報が報じられる後半がテンポよく描かれる。重っ苦しい手記を読んでいるというよりも、SF小説を読んでいるような軽快感を感じた。
また、読みながら、1995年という激動の年に思いを馳せた。自分自身が深夜に上九一色村にドライブに出かけたことや、一方でオウム真理教に対する破壊活動防止法適用に反対するデモに参加したことなどを思い出した。