月路よなぎ・漫画『マンガで読む マックスウェルの悪魔』(ブルーバックス 2011)を読む。
マックスウェルが提唱した、熱力学第二法則のエントロピーの増大を自在に操る悪魔が主人公の物語である。
漫画のお話の方は苦手だったが、あらゆる物事は単純から複雑へ、エントロピーが増大していく一方向にしか進まないという説明は面白かった。かつては王様一人で政治を動かしていた時代から、エントロピーが増大するにつれ、国民全員が政治に参加するようになっていく。また、一部の人間にしか知らされなかった情報も全て公のものになっていく。そして膨大な情報量にさらされ、やがては正常な判断ができなくなり、思考停止の状態に陥っていく。社会のエントロピーが増大すればするほど、社会不安が高まっていくという指摘は興味深かった。
また、太陽や星などの単純な分子の結合体も、いずれは宇宙空間の形あるあらゆるものが崩れ、姿を消し、宇宙全体の温度と物質の密度は平均化され、いずれ氷点下260数度の行き着くところまで進んでしまう。そうなると比べる物が何もなくなってしまうので、距離も動いていく時間という概念も通じない世界となっていく。SFのような話でこちらも面白かった。