月別アーカイブ: 2023年2月

「韓国の出生率 過去最低0.78に」

本日の東京新聞朝刊に、2022年の韓国の合計特殊出生率が過去最低の0.78となった件が報じられていた。合計得出生率とは15~49歳までの女性の年齢別出生率を合計したものであり、現在の医療体制で人口を維持するには2.1必要とされている指標である。記事によるとBRICSを除く先進38カ国が加盟する経済協力開発機構(OECD)加盟国で10年連続最低の記録だという。

授業中に触れたが、韓国の出生率の低下にはいくつかの要因がある。一つは住環境の悪化である。韓国は1970年代から80年代にかけて急激に首都ソウルに人口が集中したので、映画『パラサイト 半地下の家族』で描かれたように、家族がそろって生活できる空間が極端に少ない。

また、序列を重んじる儒教精神が強いため、親>子、父親>母親という価値観が、結婚を意識する若者に忌み嫌われている。北朝鮮との戦争状態が継続(終戦ではなく、休戦状態)されているため、徴兵制があることも、結婚を遅らせる要因となっている。

また、経済規模に比べ国内の市場が狭いため、財閥を中心とした一部の輸出産業に経済全体が依拠している歪んだ経済構造となっている。そのため、並の大学を出ても就職が覚束ないので、日本の比ではないほど学歴社会となっている。塾や習い事などの教育費の負担も出生率を押し下げる要因となっている。

韓国の事例や取り組みから学ぶことはたくさんあり、来年度の授業の中で生かしていきたい。

『【マンガ】日本経済入門』

石ノ森章太郎『【マンガ】日本経済入門』(日本経済新聞社 1987)を読む。
プラザ合意以降、急激に円高が進む中で、生き残りをかけた銀行の企業買収や海外進出に追い込まれていく自動車産業の緊迫感のあるドラマが描かれる。アメリカの大手証券会社や大蔵省まで巻き込んで展開される国際ビジネスの現場感覚が伝わってきた。

『活断層』

金子史朗『活断層:地震の謎を探る』(講談社現代新書 1979)を読む。
著者は東京文理大学の大学院地学科を卒業され、高校教諭を経て科学ジャーナリストになった方で、地震の専門家ではない。現在では地震はプレートの動きによって発生するものだと当たり前のように考えられているが、著者は活断層の動きと地震の関連について、丁寧にゼロから論じている。

「ベラルーシ・ロシア首脳会談」

本日の東京新聞朝刊にベラルーシのルカシェンコ大統領とロシアのプーチン大統領の仲睦まじい会談の様子が報じられていた。今年度の授業ではベラルーシについてほとんど触れることができなかった。ベラルーシはロシアとポーランドやリトアニア、ラトヴィアなどのEU諸国のちょうど中間に位置する。かつては白ロシアと呼ばれ、かつてのロシア帝国の一部であったため、言語的にも宗教的にも極めて近く、経済的にもロシアとの貿易が5割を占める。いずれは国家統合のような方向も検討されているほどロシアに近い国である。

一方でロシアと距離を取るような態度を表明しているため、欧米もベラルーシを攻撃する正当な理由がない。そのため、ベラルーシがロシアを欧米から守る緩衝材の働きをしている。当のルカシェンコ大統領も不正な選挙を経て当選したと批判されており同じ穴の狢(むじな)である。

『少年法』

澤登俊雄『少年法:基本理念から改正問題まで』(中公新書 1999)をぱらっと読む。
著者は國學院大学で長く教鞭を取られた研究者で、刑法・刑事政策、特に少年法を専門としている。そのため、特に1997年神戸連続児童殺傷事件以降強くなった少年犯罪への厳罰化の声に対し、丁寧に少年法の理念と保護手続きの解説、および少年犯罪の数値的な検証を試みている。刑事手続に関する話が中心だったので、ほとんど読み飛ばしてしまった。

最後に、著書は被害者感情や社会感情に配慮し、被害者救済制度が非行少年保護制度と同じ比重で議論され、内容が充実することが、少年法の理念を発展させるうえで重要となると述べている。