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『理科年表読本 地震と火山』

宇佐美龍夫・木村敏雄『理科年表読本 地震と火山』(丸善 1980)を読む。
タイトルある通り、内的営力について事例を交えて詳細に解説されている。
中学校の地理で九州南部のシラス台地を習う。火山灰が堆積した地形で水捌けが良いため、稲作はあまり盛んでなく、畑作や酪農が多いという件に繋がっていく。少々長いが引用してみたい。

今から22,000年前に現在の鹿児島湾奥の中央部にあたる地域で起きた噴火は、約100立方キロメートルのマグマを噴出した最大級の規模のものであった。この噴火はまず現在の桜島の位置ではじまり、大量の軽石が噴き上げられ、南東に噴き流れて陸上および太平洋上に降下した。堆積物の厚さは火口から30km離れた地点で最大10mに達した。次に小休止のあと、最大規模の噴火が起こったが、この時の火口は前の火口の10km離れた、やはり現在の鹿児島湾内であった。この時の爆発的噴火のガス圧は2000気圧に近く、マグマの温度は770℃であり、地下10km位の深さにあったマグマ溜まりから大量の軽石と火山灰が空中に吹き上げられた。その大部分は、あまり高空に噴き上げられることなしに地表に落下し、巨大な火砕流として火口から四方へ放射状に流れ広がって行った。最盛時の火砕流の厚さは1000mに及び、高さ700m以上の山脈を軽く越え、水平距離で100km以上も流走した。その進路にあるものは大木でも根こそぎにされ、高温の火山灰と軽石の集合体の中に埋められた木幹は、蒸し焼きにされ天然の木炭となった。22,000年もたった現在、この火砕流の堆積物の相当の部分は侵食され失われているが、当時の状況を想像すると、全九州の南半分は白色の砂と軽石の砂漠と化したであろうと思われる。おそらく九州の全人口の大半が失われたことであろう。現在鹿児島湾沿岸一帯に残っている堆積物の一部は厚さ100mを超え、”シラス台地”と呼ばれる地形をつくっている。