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「ウラン価格が急騰」

本日の東京新聞朝刊に、中央アジアのカザフスタンでの騒乱を受けて、原子力発電所の原料となるウランの価格が急騰しているとの記事が掲載されていた。記事を読むと、騒乱拡大が報じられた日、前日より8%も価格が上昇している。

ウランの埋蔵量に関する情報自体が少なく、ネットを調べてみても古い情報や信憑性の薄い情報が氾濫しており、データもバラバラである。国際原子力機関(IAEA)が発表したデータによると、ウランの埋蔵量は以下のようになっている。カザフスタンは世界第2位の埋蔵量だが、オーストラリアの約半分である。

記事にもある通り、オーストラリアから安定的に供給できるのであれば、日本の大手電力会社でつくる電気事業連合会が出した「安定確保が可能」というコメントは妥当性が担保されたものである。

世界のウラン埋蔵量ランキング

国名 2019年1月現在
kgU
オーストラリア 1,692,700 28%
カザフスタン 906,800 15%
カナダ 564,900 9%
ロシア 486,000 8%
ナミビア 448,300 7%
南アフリカ 320,900 5%
ブラジル 276,800 5%
ニジェール 276,400 4%
中国 248,900 4%

『ヒゲとラクダとフンコロガシ』

北尾トロ著・中川カンゴロー写真『ヒゲとラクダとフンコロガシ:インド西端・バルナ村滞在記』(理論社 1999)を読む。
インドとパキスタンの国境に近い乾燥地帯に暮らす遊牧民ラジプート族の中で暮らした体験記である。村にはトイレがなく、外でするのだが、乾燥しており、さらにフンコロガシが跡形もなく処理してくれるので、臭いもなく清潔だという話が興味を引いた。

『知っておきたいエチオピアの実像』

山田一廣『知っておきたいエチオピアの実像:アフリカ最古の国の素顔』(ほるぷ出版 1992)を読む。
著者は神奈川新聞社勤務を経て、エチオピア関連の著作を中心としたノンフィクションライターである。エチオピアはアフリカ大陸では珍しくキリスト教国だったので、一時期イタリアやイギリスの支配下にあったものの、欧米の植民地化は避けられ、2000年近い歴史を持つ世界最古の独立国である。2021年7月現在の推定人口は1億1000万人であり、急激に人口が増加している。

しかし、キリスト教国であるゆえに、周辺のイスラム教国のエリトリアやソマリアとの確執が数十年単位で続くことになった。また、「敵の敵は味方」論法でイスラエルが支援したり、ペルシャ湾や紅海に睨みを聞かせておきたい旧ソ連が軍事支援をするなど、周辺国との軋轢に火を注ぐようなことが繰り返された。結果、干魃などの自然的要因もあるが、人為的な要因で世界最貧国の一つに数えられている。

エチオピアの主要な輸出品にコーヒーがある。元々エチオピアの南部のカフェ州で発見されたことに因(ちな)む。そしてエチオピアからアラビア半島、東南アジア、中南米へと広がっていった。アラビア産のコーヒーは現在のイエメンのモカ港から積み出されたことから、「モカ・コーヒー」と呼ばれるようになった。

入手可能な最新の総合的データによると、2015年、世界の極度の貧困層7億3,600万人の半数が、わずか5カ国に集中していました。この5カ国は、インド、ナイジェリア、コンゴ民主共和国、エチオピア、バングラデシュです。よって、世界全体で極度の貧困層を削減するには、これら5カ国における取組みとともに、極度の貧困層のうち85%(6億2,900万人)が暮らす南アジア地域とサブサハラ・アフリカ地域の貧困削減に取り組むことが不可欠です。

(世界銀行公式サイト「1年を振り返って:14の図表で見る2019年」より )

ブルキナファソやチャド、エチオピア、ニジェール、南スーダンでは、10歳未満の子どもの約90%以上が、多次元貧困に陥っています。

(国連開発計画(UNDP)駐日代表事務所のウェブサイト「2019年グローバル多次元貧困指数」より )

「乾いた風 町ごと焼く 米・カリフォルニア州」

本日の東京新聞朝刊記事より。
昨夏、米西部カリフォルニア州の北部にあるグリーンビルという村で、乾燥した風に煽られ大規模火災が3ヶ月以上も続いたとのことである。

では一体、なぜカリフォルニア州で乾燥するのであろうか。大気大循環の項で中緯度高圧帯(亜熱帯高圧帯)を学習した。赤道低圧帯(熱帯収束帯)と北緯60度付近の亜寒帯低圧帯に挟まれた北緯30度付近は、下降気流が発生することで乾燥気候となっている。また、地軸の傾きにより、北半球でいうと、夏は北緯40度付近が中緯度高圧帯に、冬は北緯20度付近が高圧帯に入る。

イタリアを中心とした地中海沿岸は、ぴったり北緯40度付近に位置するため、夏に乾燥する地中海性気候となっている。でも、南北緯30( ±10度)度付近が全て地中海性気候となることはなく、寒流と偏西風の影響が強い大陸の西側という条件が加わる。共通テストに頻出の地中海性気候は、南緯30度付近の南アフリカ、同じくオーストラリア南西側のパース、北米のカリフォルニア州、南米のチリなど世界各地にある。

さらに北米の西側は環太平洋造山帯となっており、険しい褶曲山脈が聳える。湿った偏西風が山脈にぶつかり、山脈を超えたところで乾いた風が吹きおろすフェーン現象が生じる。カジノで有名なラスヴェガスは砂漠のど真ん中にある。記事にあるカリフォルニア州の北部も標高3000mを超えるシェラネバダ山脈の西側にあり、乾燥度合いが倍化したと考えられる。

ちなみに、日本ではフェーン現象による山から吹き下ろされる乾いた風のことを「颪(おろし)」と呼ぶ。阪神タイガースの応援歌の「六甲おろし」や群馬県の「赤城おろし」が有名。「颪」は漢字ではなく、日本独自の国字と呼ばれる字である。

『ハノイ&サイゴン物語』

ニール・シーハン『ハノイ&サイゴン物語』(集英社 1993)をパラパラと読む。
訳者のあとがきを読むと、NYタイムズの記者ニール・シーハンは、16年かけてベトナム戦争の真実を暴いた『輝ける嘘』を書いた著者として知られている。本書はベトナム戦争が終結してから20年近く経って北のハノイと南のホーチミンを訪れ、街の景色や人々との会話を通して、戦争の爪痕と戦後のベトナムの急激な変化を探るルポルタージュとなっている。
翻訳調の文章が読みにくく、ほとんど読み流した。