月別アーカイブ: 2019年9月

『「逆さ地図」で読み解く世界情勢の本質』

松本利秋『「逆さ地図」で読み解く世界情勢の本質』(SB新書 2015)を読む。
国士舘大学政経学部政治学科で講師を務める著者が,地図を逆さにすることがから見えてくる大国の思惑や軍事的脅威について語る。
著者は地政学について次のように定義する。

地政学とは地図を基本にして,その地域特有の文化や,民族の歴史,その歴史からくる民族の基本的な発想,政治形態などの情報をインプットして俯瞰するものだ。

著者はイスラム教の説く世界観は徹底した平等であり,かつて平等な社会の理念を説く社会主義に酷似しており,現代の閉塞した時代の中で,若者に魅力的に映るのは時代の現象だと説明する。

後半は,安倍政権の提灯持ちのような内容で,韓国が中国に靡く中で,いつでも核兵器を持ち得る言動を繰り返す日本政府の立場を支持する。いつまで「封じ込め」政策を夢見てんねんとツッコミを入れてしまった。

『想像ラジオ』

いとうせいこう『想像ラジオ』(河出書房新社 2013)を少しだけ読む。
アマゾンのレビューを見ると,東日本大震災をモチーフにした重いテーマを扱った作品とのことだが,そこまで踏み込む前に挫折した。
どうも,この手の一人称の語り口の作品は苦手である。読者に共感を強制するような圧力を感じてしまい,物語が頭に入ってこない。

『新オリーブオイル健康法』

松生恒夫『新オリーブオイル健康法』(講談社+α新書 2009)を読む。
最初から最後まで,オリーブオイルをたっぷり用いる地中海型食生活がいかに健康に良いかということを,科学的データを交えて繰り返し語る。著者は東京慈恵会医科大学を卒業し,大腸内視鏡検査や大腸疾患を専門とする内科医である。トマトを中心とした野菜や青魚をたっぷりと摂り,オリーブオイルで味付けすることで,便秘などの生活習慣病や心臓疾患を圧倒的に減少させることができると述べる。
消化器官の一番末端である大腸の中をずっと診てきた著者の述べることなので,データ以上に説得力があった。

先程,著書に紹介されていた納豆にオリーブオイルを試したところ,すんなりとした味わいで美味しかった。手の肌荒れもひどいので,これからオリーブオイルの化粧水なども含めて,オリーブオイルにハマっていきたいと思う。

『ゼロの焦点』

松本清張『ゼロの焦点』(新潮文庫 1959)を読む。
戦後から12,3年経った昭和32,33年,戦後の混乱期と高度経済成長期の端境期を象徴するような連続殺人事件が起こる。
数ヶ月ぶり(数年ぶり?)に時間を忘れて読書に耽った。物語の舞台となった北陸の道路地図帳を片手に,金沢,七尾,羽咋,和倉,鶴来などの場所を確認しながら旅情気分を味わうことができた。米軍立川基地やパンパン,電報,交換局など,当時の時代を象徴する単語の登場も興味深かった。

また,文庫本の解説で評論家平野謙が筆を執っている。以下の彼の短い文章であるが,この作品の概要を的確に説明している。

一個の文学作品としてみた場合,『ゼロの焦点』は失敗作かといえば,決してそんなことはない。推理小説としては多少の隙間があるとしても,一個の文学作品としてはやはり松本清張の秀作のひとつだ,というのが私の意見である。一口にいってオキュパイド・ジャパンとい未曾有の社会的混乱のなかから派生したひとつの社会的悲劇を,一見非凡な会社員の失踪という事件に具体化した作者の着眼がすぐれており,その着眼を歩一歩と現実化してゆくプロセスもまたすぐれている。

子どもの自転車整備

夜更けになってふと思い立って,真ん中の子が乗っている26インチのクロスバイク,ブリジストン社製シュラインの後輪のハブとスプロケットを整備した。
毎回のことだが,ハブの玉押しナットを緩めるときは,どれだけ汚れているのだろうと怖いもの見たさに興奮を感じる。但し,今回は玉押しの内側にグリスも残っており,内部もまあまあきれいだったので,少し拍子抜け。でも分解・洗浄した後,家の近所を走ったところ,スィーとタイヤが回るので嬉しくなった。
やはり自転車の整備は楽しい。