横山光輝『コミック 徳川家康』(講談社 1984)全23巻を読破した。
山岡荘八の原作を忠実に漫画化したもので、徳川家康の誕生から逝去までの苦難国難の歴史を丁寧に描く。何だかんだ読み終えるのに、3ヶ月近く掛かった。日本史の教科書にはあまり出てこない家康の家臣団や戦国武将のエピソードが興味深かった。服部半蔵や茶屋四郎じろう、
小牧長久手の戦いや大坂の陣など、教科書には原因と結果しか書かれていないが、歴史に残らないような数々の運や複雑な人間関係の上に成立した史実だということがわかった。タイトルにもなっている通り、「家康=正しく歴史進歩させた人」という視点に立っているので、今川氏や北条氏、石田三成などは「歴史的なミスを犯し、失敗した人」というレッテルを貼られてしまう。本書では、戦国時代の悲哀を味わい尽くした家康が徹底して武力を否定した平和を望んだ結果、元和偃武という大団円で終結するという流れになっているが、実際はどうなのだろうか? あくまで小説や漫画の世界なので、単純に楽しめれば良いのだが、歴史の見方の難しさの一端を感じた。おそらく正解は1つに絞られても解釈は無数にあるので、収拾がつかないであろう。
関ヶ原の合戦以降に、伊達政宗が登場するのだが、紙幅の都合なのか、突然表舞台に登場して、引っ掻き回すだけのピエロ役になっていたのが唯一心残りであった。