月別アーカイブ: 2017年3月

『論文・レポートの文章作法』

古郡廷治『論文・レポートの文章作法』(有斐閣新書 1992)を読む。
小論文指導を担当することになったので、勉強のつもりで例文を一つひとつ精読していった。
経済学や情報技術に関する論文の文章を取り上げ、なぜ伝わらないのか、読みにくいのかと分析を加えた上で、正しい文章に添削するという形で論が進められる。
特に「段落を書く技術」が参考になったので、ためになった部分を引用しておきたい。特に、一つの段落内に色々な内容を詰め込もうとせずに、意識的に主題を絞りこみ、他の段落が欠落しても通じるような独立性の高い内容にするという点が印象に残った。

 よい段落を書くためには、他の段落に頼らずに意味のわかる段落、文章の要素として独立性の高い段落を書くことが大事です。それには、主題の明確な段落を書くことと、結束性(つながり)の強い段落を書く必要があります。

 段落を書くときには主題を明示するように心がけるべきです。これは文の主語を明示することと同じ意味を持ちます。こうすると、文章の要素としての段落に独立性が生まれます。主題を明示しない場合には、主語を明示しない文の場合と同じく、主題を簡単に推理できるような構造にすることです。

『体験ルポ 世界の高齢者福祉』

山井和則『体験ルポ 世界の高齢者福祉』(岩波新書 1991)をパラパラと読む。
これも社事大のレポートを書く際に購入した本で、本棚整理の一環で手に取ってみた。
イギリス、アメリカ、スウェーデン、デンマーク、シンガポールの高齢者施設での実習体験がまとめられている。
松下政経塾での研究という性格上、総じて、他国の充実した福祉に比べ、日本の政治や行政、国民意識の貧困さを指摘するという論調になっている。一方で、著者は、家族が親身になって面倒をみる暖かい介護が主流の日本に比べ、高齢者自身にも自立を求め、行政や民間の福祉サービスに全面的に移行していこうとするヨーロッパのやり方にも疑問を呈している。
最後に著者は次のように述べる。

 これからは「日本の伝統的な家族扶助を壊さないためにも、公的福祉の充実が必要」と考えるべきではないか。(中略)
 お年寄りに優しい気持ちだけでは、高齢化問題は解決できない。その敬老の心を形にした「制度」が必要だ。「寝たきり大国」は、ほかでもない「家族愛・忍耐の美学」に頼る「根性」福祉の限界を如実に語っている。
 (中略)ヨーロッパの福祉制度を参考にしながら、日本人の家族愛と敬老の心を「制度」という形のあるものにすることができれば、私は日本が世界一お年寄りが暮らしやすい社会になると信じている。

『人類遺産』

今日の東京新聞夕刊に広告が掲載されていた。
ニコラウス・ゲイハルター製作・監督・撮影『人類遺産』というドキュメンタリー映画で、明日より渋谷で公開される。「撮影期間4年、世界70箇所以上にも及ぶ”廃墟”にカメラを向けた唯一無二の映像集」というキャッチコピーが唆られる。

『ボケが病院でつくられる』

大友信勝『ボケが病院でつくられる:介護と闘う家族たち』(旬報社 1998)をパラパラと読む。
社事大のレポートを書く際に買ったものだが、読まず仕舞いで本棚に眠っていた本だ。大学の授業で習ったのだろうか?
執筆当時東洋大学で社会福祉学科教授の職にあった著者が、専門的見地から自身の父親の介護で振り回される日々を赤裸々に語る。
3世代兄弟姉妹それぞれ離れ離れで生活する中で、秋田に住む父親が突然脳梗塞で入院したところから話が始まる。前立腺肥大の手術や譫妄の症状に加え、転院先での半植物状態、意識障害と続き、24時間点滴のチューブでただただ眠り続ける状態となってしまった父親の治療を巡って、著者の考察が加えられる。

『サイクリングキャンプにいこう!』

三輪裕子作・風川恭子絵『サイクリングキャンプにいこう!』(あかね書房 1998)を読む。
子どもが読むために買ったのだが、見向きもしないので、仕方なく私が読むことになった。
小学校5年生の男の子たちの一晩限りの冒険を描く。多摩川サイクリングロードを調布から羽村まで走り、中学生との喧嘩やいかついバンドマンとの交流、子供だけでのテント泊を通して、成長していく少年の物語である。
こういった物語に胸躍らせる子どもは一体どうやって育てることができるのであろうか。